主張
医療費の窓口払い
負担引き下げへ国は踏み出せ
医療機関にかかったとき窓口で支払うお金の負担が重いために、治療を我慢する人たちがあとを絶ちません。受診の遅れや中断によって容態を悪化させ、命にかかわる重い症状にいたる悲劇も生まれています。お金のあるなしによって、命と健康が左右される事態を放置することは許されません。
消費税の増税や生活必需品の値上げラッシュなど国民の暮らしがますます大変になるなか、政府は患者の窓口負担の大幅軽減と無料化の実現に力を注ぐときです。
深刻な子どもの受診抑制
日本の公的医療保険制度では、かかった医療費全体の3割を患者が負担する仕組みです(70歳以上は1~3割、小学校入学前まで2割)。公的医療保険のある国のなかで、日本ほど重い窓口負担を強いている国はありません。
子どもが授業中にやけどをしたため学校が病院に連れていくと親に連絡したところ、経済的理由から止められた。子どもにインフルエンザの疑いがあったが、お金がないから受診をあきらめ家で回復を待った―。日本共産党の田村智子議員が参院予算委員会(7日)で示した子どもたちの受診抑制をめぐる実態は、子どもの医療費の窓口負担の無料化が急務であることを浮き彫りにしています。
子ども医療費の軽減と無料化は、長年にわたる親と住民の運動の力で、すべての市区町村で実現しただけでなく、都道府県の制度としても導入されるなど大きな広がりをみせています。
中学校3年生まで無料化の対象を拡大した群馬県では、ぜんそくやアトピー性皮膚炎など慢性疾患の子どもたちの早期受診を促進し、重症化を防ぐことに役立っています。子どもの虫歯の治癒率も全国平均を大きく上回りました。県は「早期受診により重症化が防止され、結果的に医療費を抑制する」効果もあると分析しています。医療費の無料化が、子どもたちの健康を守るだけでなく、医療保険財政にとっても有効な仕組みであることは明らかです。
群馬県の調査では、医療費の無料化を中3まで拡大したあとの方が、子どもたちの時間外受診が減少していることも分かりました。“無料化すれば安易な受診が広がる”などという国の言い分が成り立たない事実を示すものです。
国が無料化実現に背を向けるだけでなく、窓口負担を無料化している自治体にたいし、本来支払われる国の助成金をわざわざ減額するペナルティー(罰則)を科していることは重大です。保守系知事からも地方の努力を妨害しているとして「断じて見過ごすことができない」と批判が上がり、知事会や市長会、町村長会は撤廃を求めています。道理のないペナルティーはただちになくすべきです。
国の制度として支えよ
国は、東日本大震災の被災地で続けてきた窓口負担軽減の仕組みを昨年秋で打ち切り、被災地の自治体と住民に大きな苦難を強いています。70~74歳の窓口負担の2割への引き上げも狙っています。
国民の命と健康を危うくする窓口負担増を強いる政治は許されません。子どもの医療費を就学前まで国の制度として無料化することや被災地の無料化支援の復活をはじめ、患者の窓口負担の大幅軽減と無料化へ、大きく踏み出す政治への転換が急がれます。