欧州緊縮派が方針転換
欧州委員長、「限界に達した」 独首相、規律の重視を継続
欧州各国で増税や公務員削減、社会保障の切り捨てを課し、大量の失業者を生んだ緊縮政策を見直す動きが広がっています。欧州委員会など従来の推進派も、相次いで方針転換の必要性を示唆。緊縮策に固執するドイツのメルケル首相を直接非難する声があがるなど、反緊縮の潮流は新たな段階を迎えています。(島崎桂)
「(緊縮)政策は基本的には正しいが、個人的には限界に達したと考えている」―欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会のバローゾ委員長は4月22日、緊縮派として異例の発言を展開しました。
EUと並び、各国に緊縮策を求めてきた国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事も同月末、「適切で、盲目的ではない財政再建が必要だ」として、過度な緊縮策の危険性を指摘しました。
イタリアでは首相に就任したレッタ氏が29日、「緊縮だけではイタリアは死んでしまう。成長政策をこれ以上待つことはできない」と方針演説で経済財政政策の転換を鮮明にしました。
バローゾ委員長らの発言にドイツのメルケル首相は、不快感を露骨に表明。23日には「緊縮策という言葉には邪悪な響きがある」「私はこれ(緊縮策)を財政均衡と呼ぶ」として、各国の経済成長を顧みず、財政規律のみを重視する従来の主張を繰り返しました。
ドイツが他国の財政規律に執着する背景には、自国経済の活況と、債権国としての危機感があります。
同国経済は、ユーロ危機に伴う通貨安の恩恵を受け、輸出産業を中心にユーロ圏での“一人勝ち”状態が続いています。一方で経済危機に陥った国への資金提供に際しては、同国の負担額がEU内で最も多く、財政規律の緩和が、新たな資金提供につながるとの懸念を抱えています。
メルケル氏の強硬姿勢に対し、仏与党の社会党は26日発表の声明で、「仏独の友好とは、メルケル首相による欧州政策との友好ではない」と名指しで批判しました。
各国の財政再建を目的とした緊縮策ですが、最近はその効果を覆す統計が相次いでいます。
EU統計局(ユーロスタット)は22日、2012年のEU加盟国の財政状況に関する統計を公表しました。黒字財政はドイツ一国にとどまり、緊縮策が進むスペインの赤字は拡大。各国の国内総生産(GDP)に対する公的債務の比率は軒並み上昇していることが明らかになりました。
緊縮策に対する国民の不満を反映し、各国で政治変動も起きています。27日投開票のアイスランド総選挙では、緊縮策を推し進めた与党が大敗。大規模な反緊縮デモが続いたスペインでは、緊縮派のラホイ政権が方針転換を迫られ、26日公表の財政計画では、赤字削減目標の先送りを決定しました。
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