憲法に反する天皇の政治利用をやめよ
「主権回復の日」 式典の中止、天皇に出席を求める方針の撤回を要求する
日本共産党幹部会委員長 志位和夫
日本共産党の志位和夫委員長は22日、国会内で記者会見し、「憲法に反する天皇の政治利用をやめよ ――『主権回復の日』式典の中止、天皇に出席を求める方針の撤回を要求する」との見解を発表しました。同日、穀田恵二国対委員長は、志位委員長が発表した見解を政府と各党に届けました。全文は次の通りです。
(1)
安倍内閣が、サンフランシスコ平和条約が発効した4月28日に、政府主催で「主権回復の日」式典を開催することを決定したことにたいして、国民のなかから広く批判の声がおこっている。
とくに沖縄では、4月28日は、平和条約により日本から切り離され米国の施政下に置かれた「屈辱の日」とされ、政府式典にたいする反対の県議会決議が超党派で採択されるとともに、大規模な抗議集会も予定されている。
沖縄タイムスの調査では、全国47都道府県のうち、知事本人が出席を決めているのは、わずか19都県にとどまっている。
わが党は、すでに3月14日に声明を発表し、1952年4月28日に発効したサンフランシスコ平和条約と日米安保条約によって、日本は形式的には独立国となったものの、実質的にはアメリカへの従属国の地位に縛り付けられたというのが、歴史の真実であることを指摘し、政府主催の式典の中止を強く求めてきたが、この式典開催の是非について、国民的合意が存在していないことは、明らかである。
(2)
くわえて、安倍政権が、「主権回復の日」式典に、天皇の出席を求める方針を決めていることは、日本国憲法にかかわるきわめて重大な問題である。
日本国憲法第4条では、天皇は、「憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」とされている。
この条文にてらして、サンフランシスコ平和条約が発効した日、沖縄・奄美・小笠原が米国の施政下に置かれ、千島列島を放棄した日、そして日米安保条約が発効した日を、肯定的に記念する式典に、天皇の出席を求めることは、憲法の規定に反する天皇の政治的利用といわなければならない。
憲法上、国民主権に基づく「国民統合の象徴」とされている天皇に、国民世論が割れている行為をおこなわせることも、憲法の精神に背くものである。
国民のなかから、「天皇を政治利用するな」「天皇を巻き込むな」という声があがっていることは、当然のことである。
(3)
以上を踏まえ、日本共産党は、政府に次の諸点を要求する。
一、「主権回復の日」式典の開催を中止すること。
一、式典開催の是非で立場が異なったとしても、天皇に式典出席を求める方針は日本国憲法に反する天皇の政治利用であり、この方針を撤回すること。
天皇の政治利用問題
志位委員長の会見
日本共産党の志位和夫委員長は、22日の会見で、「主権回復の日」式典への天皇の出席問題について、記者団に問われ、次のように答えました。
――天皇が仮に(式典に)出席しなかった場合には、安倍政権の責任ということになりますか。
志位 その場合には、責任はあげて安倍政権が負うことになります。
憲法が定めている「国事行為」については、天皇の意思が介在する余地はありません。天皇の意思によってこれを行うこともできませんし、これを行うことを拒否することもできません。すべては「内閣の助言と承認」によって行われます。
私たちは、それ以外のいわゆる「公的行為」について、「国政に関する権能を有しない」という憲法の規定に反するものでなければ、一概に反対するものではありません。たとえば、天皇が大震災の被災地を訪問したり、追悼式典に参加することなどを、否定するものではありません。
ただ、今回の式典のような、明らかな特定の政治的意図をもったもの、国民のなかで意見が分かれるようなものについて、天皇の出席を求めることは認められるものではありません。
仮に天皇の側が「式典に参加しない」という判断をした場合には、憲法第4条の「国政に関する権能を有しない」、憲法第1条の国民主権にもとづく「国民統合の象徴」、憲法第99条に規定されている天皇の憲法遵守義務にかなった判断として、当然の判断ということになります。
天皇が仮に出席しなかった場合には、その責任はあげて、憲法に反する行為を天皇に行わせようとした安倍内閣が負うことになります。
――安倍内閣が行おうとしていることは、天皇を傷つけることになるということでしょうか。
志位 憲法上、天皇は、国民主権にもとづく「国民統合の象徴」とされています。その天皇に国民世論が割れている行為を行わせたり、政治利用をはかることは、「国民統合の象徴」としての天皇の立場を損なうことになります。
「天皇を政治利用するな」「天皇を巻き込むな」という声が、国民のなかで起こっていますが、これは当然の声だと思います。
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