主張
鳥インフル
警戒を怠らず万全の備えを
中国で鳥インフルエンザの感染者が相次いでいます。中国政府の発表では、感染が確認された患者は18日までに88人、このうち17人が死亡しました。当初は、上海市などに限定されていた患者も北京市をはじめ中国各地に拡大しています。人への感染が初めて確認されたタイプのウイルス(H7N9型)です。恐れすぎる必要はありませんが、警戒を怠らず、日本でも感染に備えた万全の体制を整備することが求められます。
鳥は発症しないウイルス
中国の鳥インフルエンザ感染者は、中国政府が3月末に上海市での2人の死亡を世界保健機関(WHO)に報告して以降、じわじわと広がり続けています。感染経路は特定できておらず、中国政府がWHOと合同で詳しい分析と調査をすすめています。
上海市など感染地域の市場で売られていた鳥からはH7N9型のウイルスが確認されました。南京市の野生のハトからも同型のウイルスが検出されました。野生の鳥がウイルスを運び、ニワトリやハトなどを通じて感染が広がっていることを強くうかがわせます。感染患者のなかには、食肉鳥の仕事にかかわっていた人が少なくありません。中国政府は生きた鳥の市場での取引を禁止・制限したり、鳥の殺処分をしたりするなどしています。
パンデミック(世界的大流行)につながる、大規模な人から人への感染はいまのところ確認されていません。しかし、インフルエンザウイルスは変異しやすい特徴があります。今回も、普通は鳥しかかからないものが人に感染しやすく変異したものです。今後の注意が必要です。
死者もいますが、治療で回復した人もいます。重症化するかどうかは不明です。タミフルやリレンザなどの抗インフルエンザ薬が有効とみられています。重症化した人たちがまず報告されるので、症状の出ない感染者が多く潜在している可能性もあります。
むずかしいのは、鳥類がこのウイルスに感染しても症状が出ないことです。かつてH5N1型が鳥に流行したときは、多くの鳥の感染死が明らかになることで、感染源や地域を特定することができて、一定の対策を講じることができました。今回は感染が見えにくい、きわめて異例でむずかしいケースです。渡り鳥の感染の可能性も指摘されており、日本など周辺国でも野鳥などを含めた鳥類への監視・検査などの体制を強めることが重要になっています。
日本では、いまの段階では慌てることはありませんが、備えにぬかりがあってはなりません。早期発見と分析の体制を整えることがなにより大切です。国民のワクチン接種や診察・相談を担う地域の保健所の体制や診察・医療の体制を日ごろから確実に整備することが求められます。
正確な情報を迅速に
H7N9型ウイルスの人への感染例が今回初めてのため、どの人も免疫がありません。現時点では有効なワクチンがないため、新しいワクチンの開発と量産への準備はとりわけ急がれます。
科学的な根拠にもとづいた正確な情報を、迅速・適切に国民に提供することが、対策の前提であることはいうまでもありません。
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