主張

東日本大震災2年

被災者と心通わせ支援強めよ

 津波にさらわれた家の土台だけが残された更地が広がり、ガレキの山は積み上がったまま―。東日本大震災から丸2年、被災地は「あの時」で止まったかのようです。

 すさまじい地震と津波、世界最悪レベルの原発事故が重なった未曽有の「複合災害」は、いまなお被災地に深いツメあとを残しています。しかも復興への足取りの遅れが被災者をいらだたせます。再起に向けて懸命に生きる被災者に、いまこそ政治が寄り添い、希望を示す支援を強めるときです。

「期限切る」は実態無視

 2年前の11日午後2時46分、日本の観測史上最大のマグニチュード9・0の大地震が東日本の広い地域で激しい揺れを引き起こし、巨大津波が沿岸部を容赦なくのみ込みました。死者約1万6千人、行方不明者約2700人にのぼる大惨事の始まりです。ほぼ同時に東京電力福島第1原発で制御不能の事態が発生しました。犠牲者は東北3県を中心に北海道や神奈川県まで12都道県に及びました。

 世界の災害史上で例のない悲惨な災害は現在も進行中です。約32万人の避難者が47都道府県に散らばり暮らしています。震災直後から3割ほどしか減っていません。原発事故に直撃された福島県の避難者は約15万人に達し、原発近隣の7自治体の役場は避難したままです。時間的にも社会的にも大きな被害をもたらす原発事故の深刻さを示しています。

 発生から2年という時間は過酷です。先が見えない避難の長期化は被災者を心身ともに疲弊させています。過労やストレスによる「震災関連死」は2300人以上です。半数以上が福島県の被災者です。「孤立死・孤独死」もあとを絶ちません。助かった命が避難のなかで失われる悲劇は、「人災」以外のなにものでもありません。

 18年前の阪神・淡路大震災と比べても復興の遅れは歴然としています。「被災地は見捨てられたのか」と悲痛な声が上がるのは当然です。政府に被災者と心を共にする姿勢がないことが、被災者のやり場のない怒りをかきたてます。

 道路や公共施設を元の場所に同じようにつくらせる画一的な「復旧」の押し付けは地域の現実を踏まえていません。住宅再建のメドがたたないうえ、仮設住宅の入居期限も1年ごとに延長するやり方が、将来不安を広げています。医療・介護などの減免措置を「期限がきたから」と一方的に打ち切ったことは、被災者と被災自治体に新たな負担を強いています。

 支援が必要な人と地域がある限り支え続ける―政治がこの大原則を貫くことがいまこそ重要です。

 長引く避難生活を支えるためには、既存の「期限付き」対策では対応できないだけでなく、むしろ「足かせ」にしかなりません。ルールを押し付けるのでなく、現場にあわせるべきです。前例のない大震災には従来のやり方にとどまらない対策こそが必要です。

震災対策の試金石

 日本は世界有数の地震と火山の国です。自然災害はどこで起きてもおかしくありません。東日本大震災での復興対策をどれだけ拡充させるかは、災害に強い日本をつくるうえでも試金石です。

 被災者と心を一つに「人間中心の復興」へ力を尽くすとともに、復興政策の抜本的転換を実現していくことが重要です。