主張
日米首脳会談とTPP
交渉参加の表明は許されない
安倍晋三首相が22日に行う政権発足後初の日米首脳会談では、環太平洋連携協定(TPP)交渉への日本の参加問題が焦点になっています。首相もTPPが「聖域なき関税撤廃かどうかという感触を得ることができるかが、会談における最大の課題」と国会で述べています。その感触を得さえすれば参加すると表明したともいえ、TPP問題は大きなヤマ場にさしかかっています。
公約の5項目は格下げ
自民党は先の総選挙での公約として、TPP交渉への参加について「聖域なき関税撤廃を前提にする限り反対する」など、6項目の条件を示しました。「国民皆保険制度を守る」「食の安全安心の基準を守る」ことも含まれ、TPPに対する国民の強い懸念を反映したものです。それを守ることは安倍政権の当然の責務です。
ところが、安倍政権は公約をほごにする動きを加速しています。政府は先日示した統一見解で、参加条件を「聖域なき関税撤廃が前提でない」ことだけにしぼり、それ以外の5項目を切り捨てる姿勢をみせています。自民党が今月まとめた基本方針は公約を再確認するとしたものの、茂木敏充経産相は「(公約は)2段に書き分けている」と、5項目の格下げを認めています。日本共産党の紙智子議員は参院予算委員会で、6項目すべてを守るよう迫りましたが、安倍首相は明言を避けました。
TPP推進勢力はもともと、5項目は参加の障害にならないとの立場です。国民皆保険制度が崩壊するとの懸念に対しては、米国もそんな要求はしていないといいます。ここには明らかなごまかしがあります。米国が長年、医療市場の開放を日本に迫ってきたのは周知の事実です。国民皆保険制度を廃止せよと声高に言わずとも、医療分野への民間保険や株式会社の参入や混合診療の解禁が進めば、皆保険制度は掘り崩されます。
しかもこうした規制緩和は、TPPが出てくる以前から歴代自民党政権が追求してきたもので、安倍政権も規制改革会議で混合診療の拡大などを打ち出しています。その政権が国民皆保険制度を守るといっても保証になりません。
安倍首相のいう「聖域なき関税撤廃かどうか」の基準も問題だらけです。TPPは「例外なき関税撤廃」が前提で、基準自体が黒を白と描くものです。首相の本意は、一つでも“お目こぼし”があればいいというものではないのか。米国もオーストラリアに砂糖の例外扱いを要求しています。しかし、ごく一部の品目で関税撤廃を遅らせるなどの例外が認められても、日本農業への壊滅的打撃が回避できないことは明白です。
日本に参加迫る米国
オバマ米大統領は先週の一般教書演説で、米国内での雇用拡大のために輸出を促進する姿勢をあらためて打ち出し、TPPこそがその手だてであることを強調しました。日本の参加を迫る米国を相手に、安倍首相が参加表明を決断する危険が強まっています。
TPPは弱肉強食の市場原理主義にたって、多国籍企業の利益を確保するものです。参加すれば、日本は経済主権を失います。日米首脳会談に臨む安倍首相に参加表明させないため、TPPの実態を広く伝え、反対を強めることが不可欠です。