主張

雇用の規制緩和

過酷な職場づくり許されない

 安倍晋三政権のもとで再スタートした規制改革会議(議長・岡素之住友商事相談役)が、医療、雇用など4分野での「規制緩和」論議を開始しました。雇用の分野では、労働者を簡単に解雇できるようなルールづくり、労働時間の制限をはずして際限なく働かせる業務の拡大や制度の創設、派遣業務の対象拡大と派遣期間制限の撤廃などが検討課題になりました。労働者を無権利状態にして過酷労働に追いこみ、職場を企業の思い通りの“搾取天国”にしようとするねらいが露骨です。絶対に許すわけにはいきません。

解雇の自由化

 解雇ルール問題は、安倍内閣発足以来、経済財政諮問会議、産業競争力会議、そして今回の規制改革会議とあいついで開かれている会議の重要な焦点になっています。金銭による解雇ルールを導入しようという考えです。

 日本には、解雇を規制する厳格な法律はありません。しかし「整理解雇4要件」という判例法理があり、解雇の必要性があるか、解雇を回避する努力をしたかなどの要件を満たさないと「解雇権の乱用」として無効とされます。このため企業は裁判で勝ち目がないので、いま電機大手がすすめているような希望退職募集、退職勧奨などのやり方をとっています。

 金銭解雇の導入は、こういう回り道ではなく、わずかの金を支払って自由に計画的に解雇できるようにすることです。もうかる事業への労働移動をスムーズにして利益をあげたい企業側の身勝手な願望に応えようというものです。

 労働時間の適用除外の検討も重大です。その一つが裁量労働制の対象の拡大です。裁量労働制は、どんなに長時間労働をしても、あらかじめ労使がとりきめた時間だけ働いたとみなす制度で、残業代が出ません。規制改革会議が検討課題にしたのは、労働基準法の改悪で2000年に施行された「企画業務型裁量労働制」の適用範囲をもっと広げようというものです。「企画・立案・調査・分析」の業務を適用対象にしていますが、多くは「自己の裁量」などなく、企業の管理のもとで働いているのが実態です。これを事務系全体に広げようというねらいです。

 さらに第1次安倍内閣のときに、「残業代ゼロ法案」と猛烈な批判をあびて強行できなかった「ホワイトカラー・エグゼンプション」の創設もまたぞろ出してきました。経団連が、年収400万円以上の事務系労働者を労働基準法の労働時間規定の対象外にすると主張していたものです。これでは定刻になっても帰れない、夜なべしても残業代が出ない、過労死しても「自己責任」です。財界にとってはパラダイスですが、労働者にとってはたいへんな過酷労働です。

 労働者派遣で限定されていた医療業務の拡大など、他の検討課題を含めて規制改革会議の論点をこのまま許したら労働者の権利、労働条件はズタズタにされます。

阻止してきた実績

 これまで日本の労働者、労働組合は、政府、財界が何度も出してきた解雇の金銭解決も、「残業代ゼロ法案」も大きな反対運動で阻止した実績をもっています。輝かしい伝統です。今回の新たな動きにたいしても恐れず、軽視せず、たたかいを強めることが求められています。