中小企業の資金繰りを確保するための金融円滑化法がこの3月末で打ち切られようとしています。経営環境が厳しい中小零細企業の資金繰りだけでなく、住宅ローン利用者の支援としても喜ばれてきた制度です。中小企業、国民にとっての「命綱」ともいえる仕組みを断ち切るべきではありません。
貸し付け条件変更義務化
金融円滑化法は中小企業が金利の引き下げなど貸し付け条件の変更を希望する場合に、金融機関に応じるように義務付けた法律です。2008年のリーマン・ショック以降、経営が悪化した中小企業を支援するために09年12月から施行されました。中小零細企業のうち30万~40万社が利用したとされ、条件変更は300万件を超えます。毎月の返済負担を軽減することで資金繰りが行き詰まる倒産を減らしたと評価されています。
活用は中小企業にとどまりません。金融庁によると、12年4月から9月までの6カ月間で住宅ローン利用者からの貸し付け条件変更の申込件数は3万4911件にのぼります。そのうち金利引き下げの申し込みが1572件で1305件が実行されました。中小企業だけでなく国民に利用されている制度を、期限がきたからといって、中止する道理はありません。
金融円滑化法の打ち切りは、中小業者の資金繰りの破綻を招き、廃業や倒産を増やしかねません。
一部に「本来なら倒産すべき企業を延命させているのは問題の先送り」などという論調もありますが、あまりに冷たく一面的な見方です。倒産は「販売不振」を中心とした「不況型倒産」が大半を占めています。「放漫経営」が原因というのはごくわずかしかありません。不況の克服こそが大切であり、それは政治の責任です。
中小企業をめぐる状況は依然厳しいものがあります。1月の倒産件数も運輸業などを中心に増加に転じています。電機大企業がすすめるリストラが労働者だけでなく広範な下請け中小企業にも深刻な影響を与えることは明らかです。金融機関の貸し渋りも続いています。中小企業の経営環境が苦しい時に、金融機関が返済条件などを緩和して支援するというのは当然の社会的責任です。金融円滑化法は当面延長し、さらに使い勝手を良くすることが必要です。
中小企業への思い切った対策が求められているにもかかわらず、政府の中小企業対策はあまりにも貧弱で、中小業者の願いに応えるものにはなっていません。13年度予算案の中小企業対策費は1811億円にすぎません。4兆7千億円規模に膨れ上がった軍事費の伸び率を下回り、負担する義務のない米軍への「思いやり」予算と米軍再編経費を合わせた額よりも少ないというのが現実です。
中小企業支援の強化こそ
日本共産党の市田忠義書記局長は1日の代表質問で、中小企業を「経済のけん引力」と位置付けた中小企業憲章の立場を強調し、金融円滑化法の延長と中小企業金融の抜本的な強化を求めました。
企業の99%を占め、雇用の7割を支える中小企業への支援を抜本拡充することは「デフレ」不況から脱却して内需主導の経済を実現するためにも重要です。安倍政権は“大企業が良くなれば中小企業も良くなる”という破綻した政策にしがみつくのはやめるべきです。
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