図1 愛媛大学工学部の中原真也教授
今回用いた教育用ハイブリッドロケットは,愛媛大学工学部の中原教授が,埼玉工業大学の石原教授とともに開発したものです。火薬を使うロケットはさまざまな規制があって,かんたんに発射試験を行うことができません。そこで,開発されたのが,安全性の高い次世代ロケット,ハイブリッドロケットを題材にした教育用ロケットなのです。
図2 ハイブリッドロケット
今回は実験『ハイブリッドロケットの組み立てと発射実験』について考えてみましょう。
2 ロケットの科学理論
ロケットはどうして宇宙に飛んで行くのでしょうか?
ロケットが空を飛ぶのを支える科学理論は,作用反作用の法則と呼ばれています。
作用反作用の法則はジャンプで考えるとわかりやすいかもしれません。
思いっきり高くジャンプするためには,『床』を強くけらなくてはいけません。ここで,あなたはジャンプするときに床をける,つまり下向き(①)に力を加えています。しかし,あなたは力を加えた方向とは逆の上向き(②)に飛んでいきます。
力を作用した方向とは逆に動くので,これを反作用と呼びます。ロケットは,この作用反作用の法則を利用して,強く下向きの力を出しながら,上向きに飛んで行くのです。
また,ロケットの構造には,固体ロケット,液体ロケット,ハイブリッドロケットの3種類があります。
図3 ロケットの構造。左からハイブリッドロケット,液体ロケット,固体ロケット
それぞれの特徴は事前学習動画を確認してください。このなかでもハイブリッドロケットは,固体燃料と液体(気体)燃料の両方の良いところ取りをした次世代のロケットです。
図4 カッターコンパスでパッキンを切り出す
図5 切り出したパッキンを組み付けよう
次に点火装置の組み立てに入ります。今度は点火コイルを点火燃料であるプラスチックチューブに組み付けます。コイルとチューブは,ピッタリと密着する必要がありますので,慎重な作業が必要です。
図6 チューブに点火コイルを組み付けました
このチューブは燃料になる酸素を通すためにチューブ状になっています。考え抜かれた設計で,無駄がありません。点火コイルとチューブを組み付けたら,今度は固体燃料に点火装置を組み付けます。
図7 固体燃料(白い部分)に点火装置を組み付けます
これでハイブリッドロケットは完成です。
……いや,ちょっとまって。
せっかくですから,尾翼をつけましょう。それぞれの班が工夫した独自の尾翼を設計します。
図8 尾翼を設計しよう
完成したら打ち上げ試験です。といっても,空に向かって飛ばすと回収できないこともあるので,今回はレールの中を2 mほど飛ばします。
自信のほどは,どうでしょうか?
図9 ロケットについて一言お願いします
打ち上げ試験場はこのような感じです。臨場感は出ましたか?
図10 打ち上げ試験場
いよいよ打ち上げ試験です。打ち上げを行うときは,周りの人にもわかるように掛け声をかけます。
「点火します!」「3,2,1」「イグニッション!!」
図11 打ち上げ試験
着火に成功しました。ロケットは大きな音とともにレールの中を上のフタまで飛び上がりました。
図12 ロケットの点火の瞬間
図13 みんなで話し合います
打ち上げが終わった後は,みんなで結果について話し合います。
今回のペットボトルは500 mLと1000 mLの2種類がありました。
どちらが長く飛んだでしょうか?
また,どちらが速く飛んだでしょうか?
理論的に予測される予想と,観察した結果は同じだったでしょうか。それとも少しちがったでしょうか。それを考えることが科学です。
ロケットを通して,私たちの便利な暮らしを支える宇宙技術について考えました。みなさんが研究者になるとき,宇宙はもっと身近になっているでしょう。そのとき,あなたは何を研究するのでしょうか?
それは夢物語ではなく,20年後に現実になるお話です。
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