山本視点
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 赤いスポーツカーから降りてきたのは、サングラスをかけた男だった。
 彼は車内になにか言ってから、舌打ちしてドアを閉めた。
 私も、眼鏡も、その様子をただ眺めていた。
「ニールさん」
 と眼鏡が言う。
「どうしてあんたが、ここにいるんです?」
 どうやら知り合いらしい。
 サングラス――ニールと呼ばれた男は、頭を掻いて答える。
「ああ? 熊本から新幹線乗って、駅弁食おうと思ったら運転席の馬鹿から美味いお好み焼き屋があるって電話がかかってきて、だから腹減ってんのに我慢して広島まで――」
「そういう話をしてるんじゃないんですよ!」
「うるせぇ叫ぶな。なんとなく馬鹿を殴りたくなったから食いかけのお好み焼きパック詰めにしてわざわざ来てやったんだろうが」
 なんだかよくわからないけれど、このあいだに逃げ出そう。
 そう思っていると、スポーツカーの窓が開いた。
 ――八千代さん?
 あの赤いスーツの男が、窓から顔を出して手招きしている。
 私がそちらに近づいても、眼鏡は反応しなかった。サングラスの男に意識が向いているようだ。
 八千代さんが車を降り、後部座席のドアを開ける。
「どうぞ」
「でも」
「いざとなったら、逃げ出そう。走るより車が速い」
 仕方なく私は、後部座席に乗り込む。八千代さんは再び運転席に戻った。
「まずは懇親会への参加を決めてくれて、ありがとう」
「聞いていたんですか?」
「ぎりぎり聞こえた。聞き逃さなくてよかった」
「あれは、つい勢いで」
「じゃあやっぱりやめておく?」
「……いえ」
 なんとなく投げやりな気分で、私は答える。
「行きますよ。その、センセイって人に会えば久瀬くんのこともわかるかもしれないし」
 ふふ、と八千代さんは、愉快そうに笑う。
「うん。そうしてくれると助かる」
「どうして?」
「わからないけどね。センセイが君の参加を望んでいるなら、きっとそうなった方がいい」
 センセイ。
 その人はいったい、何者なんだろう?
 と、考えていると、助手席のドアが開いた。
 サングラスの男だ。あの眼鏡は、いつの間にかいなくなっている。
「お疲れさん」
 と八千代さんが言う。
「別に疲れてねぇよ」
「じゃあ缶コーヒー買ってきてよ」
「あ?」
「オレ、ブラック。君は?」
 八千代さんがこちらに視線を向ける。
「待てよ。寒いだろうが」
「だからあったかいの飲みたいでしょ」
「そういうことじゃねぇんだよ」
「貸し。さっさと清算しときたいでしょ」
 サングラスの男は舌打ちして、「自販機どこにあんだよ」と呟いた。
 再び車のドアが閉まってから、八千代さんが言う。
「久瀬って子のことを教えてもらえるかな?」
 と八千代さんが言う。
「簡単には説明できません」
 と、私は答えた。
 でも、明日はイヴだ。
 クリスマスが来るたびに、私は彼のことを考えていたように思う。

――To be continued
読者の反応

かめ@kameaaa32 @kameaaa32
美優ちゃんきれーに巻き込まれたなあ


かなた @walkure1122
これは一部とはパラレルな世界なのか、誰かのプレゼントで記憶を改ざんされた世界なのか…


まぁや@bell大阪班 恋バナ担当 @maaaya_bell
制作者が気にいらなくて夏の出来事を書きかえたのかなぁ…それって無敵…(°_°)


光輝@ヤマノススメ遭難 @koukiwf
超能力のない世界?
にしちゃあセンセイは権力あるし
ノイマンも「異世界に飛ばす」発言してるし違うか


七視 @namelessnewbie
ここでとべこんか…


光輝@ヤマノススメ遭難 @koukiwf
トベコン早くね?!
情報少ないよ!!
明日本番だよ!!





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