――次は、8月16日です。
と車内アナウンスが言った。
よかった、という感情と、まずい、という感情が、同時に湧き上がる。
明日のことは知りたいとは思っていた。
でも窓の外にみえる景色は、大抵よいことじゃない。
※
オレと八千代は、どこかホテルの一室にいるようだった。狭いビジネスホテルのシングルルームにみえた。
オレは見覚えのない、ソフトスーツケースをひっくり返している。
――なんなんだよ?
山の景色を、あわよくばタイムカプセルを掘り返した瞬間なんかを期待していたオレは、眉をひそめる。
どうしてオレは、知らないホテルで知らないスーツケースをあさっているんだ。
「急げよ」
と八千代が言う。
「事情はわからないが、あのメモの感じだと、あとから奪い返しても遅いかもしれない」
そして、バスは再びトンネルに入り、オレンジ色のライトしかみえなくなった。
※
「短いよ」
とオレは愚痴る。山はどこだ。
きぐるみは隣で、呑気に笑う。
「でもま、なんにもわからないよりはいいだろ?」
そうだろうか。半端に未来をみたせいで、余計、混乱したような気がした。
「オレたちは、山でタイムカプセルを掘る予定じゃなかったのかよ」
「知らないよ。ま、がんばってくれ。ところで――」
きぐるみは窓の外を指す。
「次は長いかもしれないぜ?」
さすがにもう、なにが起こるのかは、おおよそ予想がついた。
※
――次は青と紫の節、9番目の陰の日です。
と、いつものわけがわからないアナウンスが流れた。
オレはみさきやちえりによく似た少女――「サクラ」と共に、ファンタジーでめちゃくちゃな城の中を進んでいく。
サービスなのかなんなのか、さすがにドラゴンに追いかけられるシーンではなかった。ずいぶん城の奥まで進んでいるのだろう。
オレの姿は、そのまんま表現して悲惨だった。顔は憔悴しきっているし、あちこち傷だらけだし、おまけに鎧の一部が溶けたように変形していた。一方サクラは、作り物のように綺麗なままだ。
オレたちがいるのは、荒れ果てた王座がある部屋だった。柱は折れ、床はめくれあがり、あちこちが焦げている。
――そろそろラストか?
期待と不安の入り混じった心境で、窓の外の様子を見守る。――と。
スマートフォンを覗いていたオレが、ふいに叫び声をあげる。
「1番、みえてるぞ!」
なにが起こっているのかは、さすがに想像がついた。
「2番、わかった! 3番、わかった! 4番、そのへんはもう終わっていると思う。攻略本に書かれていることは、一通り終わらせた。疲れた」
窓の向こうのオレは深呼吸して、それから言った。
「質問には上から順に答えていく。こっちは、『ピエロのなぞなぞ』と『ドッペルゲンガーの間』をなんとかしたいと思っている。中の様子を詳しく教えてくれると嬉しい!」
ピエロ? ドッペルゲンガー?
いまさら驚かないが、向こうのオレはなにをしているのだろう。
コメント
コメントを書く