3D小説「bell」本編

■久瀬太一/8月8日/26時20分

2014/08/09 02:20 投稿

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  • bell本文08月08日
久瀬視点
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 まだ頭の芯の辺りが熱い。
 なんだかわけがわからない、奇跡みたいな時間を抜けて、窓の向こうのオレとサクラは薄暗い城の中を進んでいく。
 オレたちは地下を抜けたようだった。
 だが1階に上っても、城からは出られないようだった。
 巨大な扉――おそらくは出入口へと繋がる通路に、うず高く瓦礫が積み上がっていて、越えられそうにない。
 オレたちはまず、本棚がたくさんある部屋に入った。きっと書庫かなにかだろう。
 その部屋には、魔法陣の痕跡が残っていた。
 そちらに向かって、サクラが歩み寄っていく。魔法陣を描き写すのだろう。
 一緒に作業できることでもない。そのあいだ、オレは本を読んでいることにしたようだ。
 ――オレに理解できる文字なのか?
 と、すこし疑問だったが、その点は問題ないようだ。
 オレはページをめくっていく。その内容は、バスの窓からだとよくみえない。
 やがてサクラが魔法陣を描き終えて、彼女に向かって、窓の向こうのオレが尋ねる。
「サクラってのは、この王家の名前らしいな」
 サクラは頷く。
「あ、はい。私は国王の娘です」
 さも当然だ、という風に、彼女は頷いた。
 あるいは彼女にとっては、相手が自分のことを知っているのが常識なのかもしれない。
 オレは険しい顔つきで尋ねる。
「この国の王家には、聖女の血を引く女の子が必ずひとり生まれる。だが双子の姉妹が生まれたときは気をつけなければいけない。なぜなら聖女は、その血に悪魔を封じているから。双子のうちの一方が聖女の血のみを、もう一方は悪魔の血のみをひいている」
 ――双子のうち、一方が悪魔。
 それは現実の、みさきを想像させた。なら、ちえりは? 彼女が聖女なのだろうか? わけがわからない。
 君はどちらだ、とは、オレは尋ねなかった。
 サクラもうつむいているだけで、なにもいわなかった。
 だとしても、だ。
 ――この少女は、自身の姉を助けたいといった。
 聖女は悪魔を助けるだろうか。
 悪魔は聖女を助けるだろうか。
 ――いや。姉妹なら、助けようと思って当然か?
 オレは深く考えるのをやめる。
 窓の向こうのオレも、そうしたのかもれしない。
「次の部屋にいこう」
 と言って、書庫をあとにした。
 
読者の反応

比火@sol @c01010dec 2014-08-09 02:23:37
これ、まだねむれないwwww…(T_T)
 

リコリス@単冠湾泊地 @lycoris_alice05 2014-08-09 02:24:05
ここの話がな。姉妹の扱いが逆っぽいのよなー  


カムリン@yp @kamurinn 2014-08-09 02:25:54
寝かして(嬉しい悲鳴)





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