3D小説「bell」本編

■久瀬太一/8月8日/24時45分

2014/08/09 00:45 投稿

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  • bell本文08月08日
久瀬視点
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 ようやく扉の錆を落としたオレは、またスマートフォンをチェックする。ずいぶん慎重になっているようだ。
 小さな声で、ぼそりと、
「常にダッシュって。歩いてる余裕ないよ、こんなの」
 と呟いた。
 ――なにがあるんだよ。
 軽く深呼吸をして、ドアノブをつかむ。
 そして、ドアをあけた直後、オレは駆けだす。
 オレは部屋の外周にそうように走る。部屋の真ん中には、黒いローブのようなものを着た、背の高い男がいる。
 そいつはオレに気づいたようだった。
「貴様は、英雄クゼ……生きていたのか」
 妙にしぶい声で話し始める。
「仕方ない。私が始末してやろう」
 だがオレはそんなこと、聞いちゃいなかった。
 部屋の奥にある扉にまっすぐ向かう。
「逃がすか」
 黒いローブの男が、軽く右手を持ち上げる。
 その直後、オレの目の前で、扉が燃え上がった。
 だがオレはまるで、そのことも知っていたようだった。安心したように笑ってきびすを返す。
 部屋の中の、あちこちが燃え上がっていく。熱の膨張で空気が歪んだのだろう、少しだけ視界がゆらめいた。オレの額をだらだらと汗が流れているのがわかる。燃える炎をかいくぐって、オレは走る。
 オレが向かったのは、部屋のかたすみにある宝箱の前だ。
 宝箱なんてものを、実際にみるのははじめてだった。意外に大きい。一辺が70センチといったところだろうか? 綺麗な装飾がほどこされており、いかにも中身に期待させる。
 だがオレはその宝箱を開こうとはしなかった。
 横から宝箱を押す。
 その下にくぼみがあり、丸い何かが出てくる。透明な、水晶玉のようにみえるなにか。暗い部屋の中で、それはほんのりと輝いているようにみえた。あるいは周囲の炎を反射しているだけなのかもしれない。
 オレはそれをつかみあげて、前の部屋へと戻る。 

       ※

 部屋を移動し、律儀に扉を閉めたオレは、その前にさきほど拾ってきた球体を置いた。
 それから、タンスの中に飛び込む。どうやらさっきは、その予行演習をしていたようだった。
 やがて扉が開き、先ほどの、黒いローブの男が現れる。
 扉が開いた勢いで水晶玉が転がり、まるで狙ったように、ドラゴンの傍に設置していた壺にぶつかる。
 壺がやたらと大きな、甲高い音を立てて割れ、ゆっくりとドラゴンの目が開く。
「なんだ貴様は」
 と黒いローブが呟く。
 ドラゴンは、そいつを新しい餌だと思ったようだった。
 巨大な口を開け、一直線に黒いローブにかけよる。
「この私に刃向おうというのか」
 黒いローブはそっと、ドラゴンに向けて右手を掲げた。その直後だった。
 一瞬、視界が、まっ白に染まる。
 オレは思わず目を閉じた。
 再び目をひらくと、滲んだ視界から、ドラゴンが消えていた。あいつがいたところには、ただ黒い焦げ跡だけが残っている。
 ――なんだよ、それ。
 ドラゴンでも、無茶苦茶だってのに。
 平然とそれを消し炭にするような魔法を使えるような奴がいる場所で、オレになにができるってんだ?
「ちっ。魔力切れか」
 そうつぶやいた直後、黒いローブの姿が掻き消えた。
 ニールの瞬間移動みたいだ、と思ったが、あいつにだって手のひらから炎を出したりはできないだろう。
 しばらくためらうような時間を置いてから、ゆっくりとオレが、タンスの中から出てくる。
 ――まるで未来を知っているような行動だ。
 ソルたちが、指示してくれているのだろう。おそらく。
 オレは息を吐き出して、スマートフォンを取り出す。
 やはりあのスマートフォンがなければ、オレは生き残れそうにない。
読者の反応

そらいろ @s0rat0kum0 2014-08-09 00:46:53
更新まだまだ続きそう
 

子泣き少将@優とユウカの背後さん @conaki_pbw 2014-08-09 00:47:00
悪魔の声渋いんだ…  


風簷(ふうえん)@3D小説参加中 @fuen_dreamer 2014-08-09 00:59:23
まぁー、ゲームをやってない人のためにも細かく書いてるんだろうなと。  





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