3D小説「bell」本編

■久瀬太一/7月25日/21時20分

2014/07/25 21:20 投稿

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  • bell本文07月25日
久瀬視点
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 ふいに泣き声が聞こえてきた。すぐ手元からだった。
「どうして」
 スイッチが入ったまま転がっていた懐中電灯で、スーツの顔がみえていた。
 奴は泣いていた。
 思い切り顔を歪めて、子供のように声を上げて。
「私は正しいことをしたんだ。どうして、こんな目に合うんだ」
 その言葉に、ひどく苛立った。
 でも泣いている相手を殴る気にもなれず、オレは拳を宙で止めた。
 スーツは掠れた声で、どうして、どうしてと繰り返している。
 なんなんだよ、こいつは。
 奴のポケットに手をいれてみるが、反応はなかった。
 指先に触れたものをひっぱりだし、懐中電灯を掴んで照らす。財布。中には免許証も入っていた。写真は間違いなく目の前のスーツだ。これがあれば、逃げられてもすぐ警察が捜し出すだろう。
 携帯電話。手帳。どちらも一応、貰っておく。
 ズボンのポケットから、小さな鍵がみつかった。きっとこれが、みさきがいるスタッフルームのものだろう。
 オレは立ち上がる。懐中電灯で床を照らし、壁際でナイフをみつける。それを拾い上げて、歩き出す。
 背後からはまだ、スーツの泣き声が聞こえていた。
 警察が来るまで、奴の腕を掴んでいるのが正解なのかもしれない。
 でも今は、みさきを優先したかった。すぐ泣くんだ、あいつは。もうずっと前の思い出だけど。
 気が抜けたのかもしれない。全身が痛みを思い出していた。くそ、なんだこれ。どこが痛いのかもよくわからない。重たい疲労のように、痛みが全身にのしかかっていた。
 足元がおぼつかないまま、廊下を進む。
 懐中電灯で先を照らす。
 スタッフルームのドアが、開いていた。

       ※

 みさきが、いない。
 ――どうして?
 辺りをライトで照らす。ドアは内側から壊されているようだった。それで、安心する。内側からなら、きっとこれをしたのはみさきだ。彼女は自力で部屋を抜け出したのだ。
 はは、と笑った。よかった。足から力が抜けて、座り込む。
 ようやく遠くから、サイレンの音が聞こえてきた。

読者の反応

子泣き中将@優とユウカの背後さん @conaki_pbw 2014-07-25 21:21:08
違う!違うんや久瀬ー!!!  


スター(ロボ) @Sutaa 2014-07-25 21:21:15
「私は正しいことをしたんだ。どうして、こんな目に合うんだ」wwww
ヤバい面白いww


交響楽 @koukyoraku 2014-07-25 21:21:22
久瀬君ーさらわれてるからー


子泣き中将@優とユウカの背後さん @conaki_pbw 2014-07-25 21:19:41
まだ電波届かないんだよなー 


木庭さんいました @kbmkt_ 2014-07-25 21:21:44
そういえば公式ページの右上に電波状況出てんだね、知らなかったや 


てそらさん@ただいま @bluewind_aoi 2014-07-25 21:21:46
安心しちゃだめなんだよ久瀬くんー!!!! 





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