3D小説「bell」本編

■久瀬太一/7月25日/21時10分

2014/07/25 21:10 投稿

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  • bell本文07月25日
久瀬視点
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 スーツが通路の奥へと走っていく。その後を追いながら、オレは110番にコールする。
 電話が繋がったとき、スーツの持っている懐中電灯の明かりが消えた。
 気にせずオレは、電話につげる。
「女の子が廃墟に連れ込まれています」
 相手が何か言っていたが、一方的にどうにか覚えていた町名と、ホテルだった建物だと告げた。ホテルの名前までは記憶していない。
「早く来て――」
 ください、という前に殴られた。スーツがこちらに近づいていることは足音でわかったから、覚悟はできていた。スマートフォンが手から飛び出す。
 空いた手を、スーツがいるはずの場所に伸ばす。指先に何かが触れる。がむしゃらにそれを掴んで、もう一方の手を握りしめる。思いっきり振ると、とりあえず相手には当たったようだった。低いうめき声が聞こえた。
 もう一度、もう一度。おそらくスーツの胸の辺りをつかんだまま、オレは目の前を殴る。うまく呼吸できなかった。人を殴るのなんて、何年ぶりだろう。
「待て」
 とスーツが言った。待つはずがなかった。
 もう一度殴ると、指からスーツが抜け落ちた。奴が転倒したようだった。
 足元で何か光る。スーツが懐中電灯のスイッチを入れたのだ。眩しくて、思わず目を細める。
 懐中電灯の光には、別の輝きが混じっていた。
 スーツは床に座り込んだまま、小ぶりなナイフの刃をこちらに向けていた。
「待て。動くな」
 ともう一度、スーツが言った。
 さすがに、刺されたくはない。警察には連絡を入れたのだ。このまま動かずに済むなら、それも悪くはない。
 見下ろして尋ねる。
「お前、それでどうするつもりだ?」
「あいつは悪魔だ。悪魔は自ら死を選ぶ」
「そんなこと訊いてねぇよ」
 足を踏み出し、ナイフを持っているスーツの手を蹴る。どこかにナイフが飛んでいく。
 ――もう必要なことはしたんだ。あとは時間を稼げばいいんだ。
 と、理性は言っていた。気にせずにオレはまた、スーツに掴みかかる。
 こんなにもオレは短気だっただろうか? ――いや、こいつは誘拐犯だ。みさきを殺そうとしたんだ。これで短気ってことはない。
 倒れ込むように男の顔を殴る。下から殴り返される。痛くない。馬乗りになって、何度も拳を突き出す。
 ――どうして、みさきが誘拐されてんだよ?
 世の中はたまにおかしい。ぶん殴れば、それは元に戻るのだろうか? きっとそんな単純な話じゃないなと思いながら、オレはまたスーツを殴った。

読者の反応

もやしくん @moyashikun4545 2014-07-25 21:09:20
久瀬くんがノートPCで殴られると思ってたのに!! 


もっち @mochi_0307 2014-07-25 21:11:26
久瀬くんつよいなw 


達句英知 @tac9999 2014-07-25 21:12:33
久瀬氏バーサーカーモード


ひろぽん(暇人101) @hiropon1015 2014-07-25 21:15:46
久瀬君のスーパーフルボッコタイムですかwww
なんか今回展開凄いなw


スター(ロボ) @Sutaa 2014-07-25 21:16:44
良いぞ久瀬、そのうちバスを投げられるようになるからそいつで鍛えるんだ…


灰色(しろくろ)パンダ@3D小説参加中 @Miraclekurami 2014-07-25 21:17:56
久瀬悪魔説ktkr 


てそらさん@ただいま @bluewind_aoi 2014-07-25 21:14:28
久瀬くん殴ってる場合じゃないよ。ドアの向こうでは大変な事が起こってるのよ 





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