3D小説「bell」本編

■久瀬太一/7月25日/12時

2014/07/25 12:00 投稿

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  • bell本文07月25日
久瀬視点
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 近場の喫茶店に入り、アイスコーヒーを注文する。
 それから、鞄の中から『聖夜教典』を取り出し、挟んでいた暗号をテーブルに広げた。さっぱりわからない。
 問題の写メを友人数人に送ってみたところ、ひとりから「現実逃避か?」と返信があった。しばらく意味がわからなかったが、そういえば今日は企業合同説明会だ。
 事情を話せば、誰か協力してくれるだろうか? ――いや、時間の無駄だろう。もし「未来がみえるバスに乗って、女の子が倒れていて――」なんてことを友人が言い出したなら、オレだって現実逃避かと思う。
 ――ソル。
 今、オレが頼れるのは、正体のわからない、どこかの誰かだけだった。
 ――お前なら、この暗号を解けるのか?
 腕時計に目をやる回数が増えていることに気づき、舌打ちする。今は暗号に集中するべきだ。知っていたけれど、どうしても瓦礫の中に倒れたみさきの姿がフラッシュバックする。
 オレに彼女を救えるだろうか?
 目についたのは、いくつもの写真やイラストなどが並んだ暗号だった。上部の左に「CHAPTER」、右に「VERSE」と書かれている。
 ――章と、節か?
 オレはテーブルの上にあった『聖夜教典』を開く。それは細かく章で区切られ、そして各段落に節の番号が振られている。
 ――暗号は、これを指しているのか?
 オレはその冊子のページをめくる。それが教典だとは、オレには思えなかった。作りがチープすぎるというのもある。なによりも内容が、教典らしくなかった。
 そこにはある少年に関するエピソードが断片的に記されていた。ある英雄的な少年。時に友人を助け、時に大人たちの過ちを裁く。でも特別な力はなにも持っていない。
 元々は、暗号の手がかりを探すつもりでページを開いた。
 でも読み進めるうちに、違和感に気づく。
 ――オレは、このエピソードを知っている?
 知っている、どころじゃない。
 体験したことがある。
 明らかに誇張されていた。幼い頃のオレには、これほどの勇気も、正義感もなかった。でもそこに並んでいるエピソードはすべて、身に覚えのあるものだった。
 ――偶然、なのか?
 こんな偶然、あり得るのか?
 ふいに思い出す。あのアタッシェケースの暗証番号は、オレの誕生日だった。
読者の反応

capo @caporello 
電波ありになってる! 


歩野 @happyluvlife 
電波入った!連絡つくぞ!


闇の隠居 @yamino_inkyo 
じゃあやっぱり割り出した章と節に当たる文章を読んでもらわなきゃ?





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