この辺は余談になってしまいますが、一応書いておきます。

橋本治氏が「明治20年代の作家たち」の中で以下のように述べていました。明治に入り、男たちは無理に近代人たろうするが、その必然性にピンとこない「近代の皮を被った前近代の女たち」に翻弄されると。10代で遊郭通いをし、既婚者の癖に「処女の純潔」を尊いと論じてしまった北村透谷がキリスト教徒だったのは偶然でもなんでもありません。日本の近代青年と性のストイシズムは密接不可分で、その背後にはキリスト教的近代がある。で、明治以降を担ったのはこの近代青年の末裔たちなので、日本には土着的な性意識（～江戸時代由来）とストイックな性意識（近代由来～）とが混ざり合って存在し、ややこしいことになっているわけです。透谷の矛盾した性意識は、近代と前近代の狭間で懊悩する近代青年の典型を表していますね。透谷は自殺しちゃいましたけど・・・。

男性視点からしか書いていませんが、男性の（タテマエの）性意識が女性と比べてかなり屈折していることが多いのは、男性の多くが無理やり近代人（欧米人）たろうとするからでしょう。でも生理的には土着的性意識が勝るので、かの有名な「ソープランドで説教するオヤジ」が出来上がってしまうわけです。別に童貞でもないおじさんたちがねじくれてるのはそういう理由があるのですが、女性にはそんな理由をいちいち想像してやる義理もないため、アホな男の前で「なんだかなあ」と首を傾げるしかなくなるわけです。