7月の半ばに林業の講座に出席するために高知県にまで行ってきました。場所は高知市から車で一時間ほどにある仁淀川沿いの佐川町です。ここで受講した講座は林業に止まらず、これから里山で活動する、もしくは企業などの経営や国、市町村におけるこれからの事業で取り組んでいこうとしている方々にも参考になると思いますので思い当たる方ならできれば読んでほしいと存じます。 まず、林業というのは中山間地では欠かせない事業であり、中山間地にある山林を含む山林の大半は林業を前提に杉や檜が植えられた檜林です。これら杉、檜林は面積、量ともに材木としては十分にあり、持続性さえ保てれば現在の材木消費量でも国内だけで賄い、林業を続けていくことも十分に可能なわけです。 しかし、ここで問題なのは林業への取り組み方で現在の林業の99.9%ほどが林野庁傘下の森林組合による大型機械導入の大規模型皆伐林業であり、この林業のやり方では持続は経済的にも物理的にも不可能であり、経済的に採算が合わない森林が増える一方で山林は荒廃していくばかりで、中山間地の過疎化も止まりません。 なにしろ、現在行われている林業では機械の導入に一億円、整備費に一千万円、燃料が一日に最低200L必要で、さらに人員も最低3人は必要となります。それいでいて、皆伐をするとして手元に残るのは10ヘクタールあたりに立った700万円でありどう考えても補助金なしではやっていけません。しかも、いちど、皆伐をしてしまうと60年間はその山で林業はできないわけで、経営としてはまったく成り立たないわけです。さらに、大型機械を導入するために大規模な山道を作る必要があり、そのための経費も掛かる傍ら、山道が大きすぎるために土砂は地滑りが多発し、自然災害の源になるばかりか、この災害が基でアユやイワナ、ヤマメが生息するような清流が土砂で埋まってしまうという事態にまでなってしまうわけです。もちろん、この影響は海洋にまで及ぼし、適切な養分が海にながれずに魚介類の減少に繋がり、水産業の衰退にも繋がります。 この大規模林業に対して現在、高知県を始めとする中山間地で取り組まれているのが自伐型林業であり、これは家族、または一人から数人規模で行う林業です。この林業の特徴とはまず、投資設備が極めて少額で済むことで(全額投資しても最高で400万)で、しかも、間伐によって伐採できる木を選ぶことが出来るので労働条件も全然厳しくありません。なにしろ、すごい所になると一日5万円の収入が入り、中には1000万円の年収を得ながら三日に二日は休んでいるというまるで嘘としか思えない自伐林業家もいるほどです。さらに、大型機械の導入も必要ないし、皆伐もないので大規模山道の建設や皆伐による土砂や地滑りの発生の心配もありません。大規模林業では大型機械の導入と同時に人員の労働条件も悪く、装備は最先端で高価な安全装備を支給される一方で従事者一人一人の道徳観は悪質な労働条件で低下を招いてしまい、その結果、山火事となる喫煙を現場で行い、山火事の発生の源となってしまうなど問題も度々発生していますが、自伐の場合は労働条件は先ほども述べたとおり、粗悪とはほど遠い内容なので山火事の心配もありません。 また、間伐を行うと山林の土壌は杉や檜が生えていることから良質であることが多く、自然と潜在自然植生の植物が生えてきて、生物の多様性を復活させています。 実は、昭和40年に木材の自由化が発表された時に林業を近代産業化による大規模化にさせるか、家族経営を維持し、強化させるかで論争が起こりまして、その結果、近代産業化による大規模化を推進し、いまの大規模林業にいたるのですが、この大規模林業が導入された昭和40年に中山間地の過疎化が始まりました。これはいかに林業が中山間地によって重要な産業であったかが見て解ります。そして、この大規模林業が導入された結果、それまでなかった土砂や地滑り、水害が頻繁に起こり、昭和43年には土砂が起因となる飛騨川バス転落事故が発生しています。実際には山林は皆伐して3~4年後に土砂が発生すると言われているのでこのような痛ましい事故も無縁とは言えません。 以前にna85さんがリンク先で紹介した「鎮守の森」 http://ch.nicovideo.jp/yoshirin/blomaga/ar383710/172 にこの自伐林業を組み合わせれば日本の中山間地における活動はほぼ解決するのではと思いますし、さらには使えない材木を薪ストーブ、薪バイオマス発電へと昇格させ、そして加工材木をCLTやこれに伴う加工材木として活用すればもはや中山間地は都心部に頼らない循環型経済を成立させることが出来ます。また、この自伐林業を持続的に行っていくには70~80haが必要であることから20haから70haまでは一時的な自伐林業を行い、さらにはその後は潜在自然植生で鎮守の森を活発化させ、20ha以下から都心部には鎮守の森を活用化させる。そして70ha以上は自伐型林業による林業と雇用の推進を行う。大規模林業に比べて雇用が10倍であることから、もはや林業が衰退産業とは自伐林業ではだれも思わないと思います。 これで島根県のように住いの確保と林業を含む職業の斡旋、地域とのやりとりを町ぐるみでやってくれれば新たなる未来は里山にあるという我が國の将来性が完全に導かれることとなるでしょう。 さて、長々と林業について述べることとなりましたが、この自伐林業を通して今後の事業の在り方を見てみますと、近年は合併や吸収を繰り返しては合理化、効率化による大量生産、大量消費を推進してグローバルに参入、または対抗していますが、昭和40年代から始まった林業の大規模化、効率化が何をもたらしたかと言えば林業の衰退でした。この林業の衰退は林材が平成元年までバブル状態で小規模、個人、または家族経営の林業が生活できるだけの収入を維持してきたことから外国産の林材に推されて衰退したという説は明らかに間違いであるとのことです。 TPPを含むグローバル産業に対抗するために農家も大規模農家に限定するという働きがありますが、たとえ経済的に外国産の農産物に勝てても林業の大規模化が山林の荒廃による自然災害を誘発させ、山間地の衰退と過疎化を招いたことからたとえどんなに優れた農業でも大規模化になればその時点でおしまいであることを林業が証明しています。そして、やがては農業も林業と同じく、一社独占の状態となり、東電やかつての日航のような惨状を齎すことは目に見えています。 もしかしたら、この林業の大規模化と効率化重視に見られる衰退と荒廃は一次産業だけではなく、多くの方々の現場にも所々で見られるのではないのかと思います。近年はグローバル戦略という名目で合併、吸収による大規模化、効率化を図っていますが、一刻も早く、この大規模化、効率化に対する強い警戒心と危機感を持ち合わせなければ近いうちにこれら企業や事業は皆、行き詰まり、林業と同じく補助金なしでは破綻するものと思います。 逆に自伐林業のように、家族や個人による事業を見直さなければならない日も同じ時期に到来すると思います。ベンチャーとは違う、自伐林業にみる、個人や家族労働の尊重をもう一度、見直してみては如何でありましょう。 参考文献「バイオマス材収入から始める副業的自伐林業」中島建造 林業改良普及双書出版 「林業新時代『自伐』がひらく農林家の未来」佐藤宣子 興梠克久 家中茂 農文協出版
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7月の半ばに林業の講座に出席するために高知県にまで行ってきました。場所は高知市から車で一時間ほどにある仁淀川沿いの佐川町です。ここで受講した講座は林業に止まらず、これから里山で活動する、もしくは企業などの経営や国、市町村におけるこれからの事業で取り組んでいこうとしている方々にも参考になると思いますので思い当たる方ならできれば読んでほしいと存じます。
まず、林業というのは中山間地では欠かせない事業であり、中山間地にある山林を含む山林の大半は林業を前提に杉や檜が植えられた檜林です。これら杉、檜林は面積、量ともに材木としては十分にあり、持続性さえ保てれば現在の材木消費量でも国内だけで賄い、林業を続けていくことも十分に可能なわけです。
しかし、ここで問題なのは林業への取り組み方で現在の林業の99.9%ほどが林野庁傘下の森林組合による大型機械導入の大規模型皆伐林業であり、この林業のやり方では持続は経済的にも物理的にも不可能であり、経済的に採算が合わない森林が増える一方で山林は荒廃していくばかりで、中山間地の過疎化も止まりません。
なにしろ、現在行われている林業では機械の導入に一億円、整備費に一千万円、燃料が一日に最低200L必要で、さらに人員も最低3人は必要となります。それいでいて、皆伐をするとして手元に残るのは10ヘクタールあたりに立った700万円でありどう考えても補助金なしではやっていけません。しかも、いちど、皆伐をしてしまうと60年間はその山で林業はできないわけで、経営としてはまったく成り立たないわけです。さらに、大型機械を導入するために大規模な山道を作る必要があり、そのための経費も掛かる傍ら、山道が大きすぎるために土砂は地滑りが多発し、自然災害の源になるばかりか、この災害が基でアユやイワナ、ヤマメが生息するような清流が土砂で埋まってしまうという事態にまでなってしまうわけです。もちろん、この影響は海洋にまで及ぼし、適切な養分が海にながれずに魚介類の減少に繋がり、水産業の衰退にも繋がります。
この大規模林業に対して現在、高知県を始めとする中山間地で取り組まれているのが自伐型林業であり、これは家族、または一人から数人規模で行う林業です。この林業の特徴とはまず、投資設備が極めて少額で済むことで(全額投資しても最高で400万)で、しかも、間伐によって伐採できる木を選ぶことが出来るので労働条件も全然厳しくありません。なにしろ、すごい所になると一日5万円の収入が入り、中には1000万円の年収を得ながら三日に二日は休んでいるというまるで嘘としか思えない自伐林業家もいるほどです。さらに、大型機械の導入も必要ないし、皆伐もないので大規模山道の建設や皆伐による土砂や地滑りの発生の心配もありません。大規模林業では大型機械の導入と同時に人員の労働条件も悪く、装備は最先端で高価な安全装備を支給される一方で従事者一人一人の道徳観は悪質な労働条件で低下を招いてしまい、その結果、山火事となる喫煙を現場で行い、山火事の発生の源となってしまうなど問題も度々発生していますが、自伐の場合は労働条件は先ほども述べたとおり、粗悪とはほど遠い内容なので山火事の心配もありません。
また、間伐を行うと山林の土壌は杉や檜が生えていることから良質であることが多く、自然と潜在自然植生の植物が生えてきて、生物の多様性を復活させています。
実は、昭和40年に木材の自由化が発表された時に林業を近代産業化による大規模化にさせるか、家族経営を維持し、強化させるかで論争が起こりまして、その結果、近代産業化による大規模化を推進し、いまの大規模林業にいたるのですが、この大規模林業が導入された昭和40年に中山間地の過疎化が始まりました。これはいかに林業が中山間地によって重要な産業であったかが見て解ります。そして、この大規模林業が導入された結果、それまでなかった土砂や地滑り、水害が頻繁に起こり、昭和43年には土砂が起因となる飛騨川バス転落事故が発生しています。実際には山林は皆伐して3~4年後に土砂が発生すると言われているのでこのような痛ましい事故も無縁とは言えません。
以前にna85さんがリンク先で紹介した「鎮守の森」
http://ch.nicovideo.jp/yoshirin/blomaga/ar383710/172
にこの自伐林業を組み合わせれば日本の中山間地における活動はほぼ解決するのではと思いますし、さらには使えない材木を薪ストーブ、薪バイオマス発電へと昇格させ、そして加工材木をCLTやこれに伴う加工材木として活用すればもはや中山間地は都心部に頼らない循環型経済を成立させることが出来ます。また、この自伐林業を持続的に行っていくには70~80haが必要であることから20haから70haまでは一時的な自伐林業を行い、さらにはその後は潜在自然植生で鎮守の森を活発化させ、20ha以下から都心部には鎮守の森を活用化させる。そして70ha以上は自伐型林業による林業と雇用の推進を行う。大規模林業に比べて雇用が10倍であることから、もはや林業が衰退産業とは自伐林業ではだれも思わないと思います。
これで島根県のように住いの確保と林業を含む職業の斡旋、地域とのやりとりを町ぐるみでやってくれれば新たなる未来は里山にあるという我が國の将来性が完全に導かれることとなるでしょう。
さて、長々と林業について述べることとなりましたが、この自伐林業を通して今後の事業の在り方を見てみますと、近年は合併や吸収を繰り返しては合理化、効率化による大量生産、大量消費を推進してグローバルに参入、または対抗していますが、昭和40年代から始まった林業の大規模化、効率化が何をもたらしたかと言えば林業の衰退でした。この林業の衰退は林材が平成元年までバブル状態で小規模、個人、または家族経営の林業が生活できるだけの収入を維持してきたことから外国産の林材に推されて衰退したという説は明らかに間違いであるとのことです。
TPPを含むグローバル産業に対抗するために農家も大規模農家に限定するという働きがありますが、たとえ経済的に外国産の農産物に勝てても林業の大規模化が山林の荒廃による自然災害を誘発させ、山間地の衰退と過疎化を招いたことからたとえどんなに優れた農業でも大規模化になればその時点でおしまいであることを林業が証明しています。そして、やがては農業も林業と同じく、一社独占の状態となり、東電やかつての日航のような惨状を齎すことは目に見えています。
もしかしたら、この林業の大規模化と効率化重視に見られる衰退と荒廃は一次産業だけではなく、多くの方々の現場にも所々で見られるのではないのかと思います。近年はグローバル戦略という名目で合併、吸収による大規模化、効率化を図っていますが、一刻も早く、この大規模化、効率化に対する強い警戒心と危機感を持ち合わせなければ近いうちにこれら企業や事業は皆、行き詰まり、林業と同じく補助金なしでは破綻するものと思います。
逆に自伐林業のように、家族や個人による事業を見直さなければならない日も同じ時期に到来すると思います。ベンチャーとは違う、自伐林業にみる、個人や家族労働の尊重をもう一度、見直してみては如何でありましょう。
参考文献「バイオマス材収入から始める副業的自伐林業」中島建造 林業改良普及双書出版
「林業新時代『自伐』がひらく農林家の未来」佐藤宣子 興梠克久 家中茂 農文協出版