いつも配信ありがとうございます。 Q&Aコーナーで、ゆきポンさんが福島の甲状腺癌について書かれていたのを見て、久々に投稿させていただきます。 私は以前「100mSvで0.5%の癌リスク」というのは発癌率ではなくて癌死亡率である、ということを投稿させていただいた内科医です。 https://www.gosen-dojo.com/index.php?action=pages_view_main&active_action=journal_view_main_detail&post_id=1928&comment_flag=1&block_id=736#_736 先日2月7日に福島県が、下記の内容を発表しました。 http://www.jiji.com/jc/zc?k=201402/2014020700892 東京電力福島第1原発事故を受け、福島県が当時18歳以下だった子どもを対象に実施している甲状腺検査で、33人が甲状腺がんと確定したことが7日、分かった。前回発表から8人増加した。福島市で同日開かれた「県民健康管理調査」検討委員会で示された。 検討委は放射線の影響について、「これまでの知見から言えば考えにくい」との見解を示した。(2014/02/07-19:06) 県の公式リリースはこちら http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/260207siryou2.pdf 県の発表によると、これまで手術を受けた子供は34人。 切除した甲状腺の病理診断では、34人中1人のみが良性腫瘍。33人が癌でした。 検討委はこれまで一貫してこれらの癌と原発事故との関連を否定。 その根拠は「チェルノブイリの時は4~5年後から甲状腺癌が増えた。だから事故後1~3年間の癌は事故と無関係」という、非常に非科学的なものです。 また手術して癌と「確定」したのが33人であって、細胞診の結果ガンと診断されたのは75人います。本来ならこちらが「確定人数」なのですが。 そしてこの75人中、男の子が28人、女の子が47人です。 本来甲状腺癌の男女比は1:6程度。この28:47という男女比は明らかに自然発生の癌ではないことを示していると思います。 チェルノブイリよりも早期から甲状腺癌に見つかっている原因として下記の二つを考えます。 A:検査機器(特にエコー機器)の性能向上にて、チェルノブイリ当時より癌検出力が上がった B:チェルノブイリよりも被曝量が大きかった Bについては諸説あるようで専門外の私は論評しません。 ただAについて確実にあるはずです。 当の山下俊一氏が2000年の長崎県の調査と2011年~の福島の調査では、エコー機器の性能が違うと発言しています。 http://savekidsjapan.wordpress.com/2013/06/17/ii-%E7%94%B2%E7%8A%B6%E8%85%BA%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E7%B5%90%E6%9E%9C%E3%81%A8%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E3%81%AE%E6%B2%88%E9%BB%99thyroid-test-and-silence-of-doctors/ 1986年のチェルノブイリ時はもっとエコー機器の性能が劣っていたはず。当時事故1~2年後に検出できなかった甲状腺癌が、約25年の性能向上にて検出できるようになっていることは容易に想像することができます。 エコー機器性能についてはこちらにも記載があります。 http://www.com-info.org/ima/ima_20131030_nishio.html がんセンター名誉院長の文章なので、私の文章とは信憑性が違います(笑) 年間20mSv被曝する土地に5年間住むと100mSvの被曝になります。 そして少なくともその0.5%が被曝による癌で死亡することになります。 甲状腺乳頭癌の10年生存率は95%と言われています。つまり死亡率は5%。ざっくり計算ですが、甲状腺癌で死亡した人の20倍の人数が発癌するということになります。「発癌リスク」と「癌死亡リスク」というのはこれくらい違うデータだということです。 また上乗せされる0.5%の癌死亡は、原発事故後比較的近い時期に若年で非業の死を遂げることになります。80歳90歳になってなかば寿命のごとく発癌→死亡するものとは違います。 そして被曝による癌で死亡した人がいないからいいじゃないかと原発推進派の皆さんは言います。しかし以前も書きましたが、甲状腺癌の手術をすると首の前面に傷が残り、服で隠すことも難しい位置です。手術を受けた子供たちは、これから毎年の夏、どんな服装をするのだろう。プールに行くのを避けたりするのだろうか、などと考えるといたたまれない気持ちになります。特にこれから思春期を迎える女の子の心理的ダメージは大きいでしょうし、傷の存在から深刻な被曝をしたことがわかってしまい、結婚の障害になったりもするでしょう。また甲状腺を手術で取ってしまう以上、一生甲状腺ホルモン剤を服用しなければいけません。子どもたちにとっては、癌を発症するだけでも大きな大きなダメージを受けるわけです。 先日朝日新聞に「私は将来子どもを産んでもいいのだろうか」という福島の女子高校生からの投書が載っていました。本当に胸が痛みます。原発推進者はデマだヤラセだと言って済ませてしまうのでしょうか。 「0.5%は発癌率ではなくて癌死亡率」「癌は被曝被害のごく一部」「実際の被害の有無にかかわらず現地住民は大きな不安を抱えながら生きなければならない」などなど、まだまだ被曝被害は過小評価されているなあと感じます。この甲状腺癌33人というニュースが全く世の中で話題にならないことは本当に恐ろしいことだと思いました。 長文失礼いたしました。
チャンネルに入会
フォロー
小林よしのりチャンネル
(ID:13304135)
いつも配信ありがとうございます。
Q&Aコーナーで、ゆきポンさんが福島の甲状腺癌について書かれていたのを見て、久々に投稿させていただきます。
私は以前「100mSvで0.5%の癌リスク」というのは発癌率ではなくて癌死亡率である、ということを投稿させていただいた内科医です。
https://www.gosen-dojo.com/index.php?action=pages_view_main&active_action=journal_view_main_detail&post_id=1928&comment_flag=1&block_id=736#_736
先日2月7日に福島県が、下記の内容を発表しました。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201402/2014020700892
東京電力福島第1原発事故を受け、福島県が当時18歳以下だった子どもを対象に実施している甲状腺検査で、33人が甲状腺がんと確定したことが7日、分かった。前回発表から8人増加した。福島市で同日開かれた「県民健康管理調査」検討委員会で示された。
検討委は放射線の影響について、「これまでの知見から言えば考えにくい」との見解を示した。(2014/02/07-19:06)
県の公式リリースはこちら
http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/260207siryou2.pdf
県の発表によると、これまで手術を受けた子供は34人。
切除した甲状腺の病理診断では、34人中1人のみが良性腫瘍。33人が癌でした。
検討委はこれまで一貫してこれらの癌と原発事故との関連を否定。
その根拠は「チェルノブイリの時は4~5年後から甲状腺癌が増えた。だから事故後1~3年間の癌は事故と無関係」という、非常に非科学的なものです。
また手術して癌と「確定」したのが33人であって、細胞診の結果ガンと診断されたのは75人います。本来ならこちらが「確定人数」なのですが。
そしてこの75人中、男の子が28人、女の子が47人です。
本来甲状腺癌の男女比は1:6程度。この28:47という男女比は明らかに自然発生の癌ではないことを示していると思います。
チェルノブイリよりも早期から甲状腺癌に見つかっている原因として下記の二つを考えます。
A:検査機器(特にエコー機器)の性能向上にて、チェルノブイリ当時より癌検出力が上がった
B:チェルノブイリよりも被曝量が大きかった
Bについては諸説あるようで専門外の私は論評しません。
ただAについて確実にあるはずです。
当の山下俊一氏が2000年の長崎県の調査と2011年~の福島の調査では、エコー機器の性能が違うと発言しています。
http://savekidsjapan.wordpress.com/2013/06/17/ii-%E7%94%B2%E7%8A%B6%E8%85%BA%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E7%B5%90%E6%9E%9C%E3%81%A8%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E3%81%AE%E6%B2%88%E9%BB%99thyroid-test-and-silence-of-doctors/
1986年のチェルノブイリ時はもっとエコー機器の性能が劣っていたはず。当時事故1~2年後に検出できなかった甲状腺癌が、約25年の性能向上にて検出できるようになっていることは容易に想像することができます。
エコー機器性能についてはこちらにも記載があります。
http://www.com-info.org/ima/ima_20131030_nishio.html
がんセンター名誉院長の文章なので、私の文章とは信憑性が違います(笑)
年間20mSv被曝する土地に5年間住むと100mSvの被曝になります。
そして少なくともその0.5%が被曝による癌で死亡することになります。
甲状腺乳頭癌の10年生存率は95%と言われています。つまり死亡率は5%。ざっくり計算ですが、甲状腺癌で死亡した人の20倍の人数が発癌するということになります。「発癌リスク」と「癌死亡リスク」というのはこれくらい違うデータだということです。
また上乗せされる0.5%の癌死亡は、原発事故後比較的近い時期に若年で非業の死を遂げることになります。80歳90歳になってなかば寿命のごとく発癌→死亡するものとは違います。
そして被曝による癌で死亡した人がいないからいいじゃないかと原発推進派の皆さんは言います。しかし以前も書きましたが、甲状腺癌の手術をすると首の前面に傷が残り、服で隠すことも難しい位置です。手術を受けた子供たちは、これから毎年の夏、どんな服装をするのだろう。プールに行くのを避けたりするのだろうか、などと考えるといたたまれない気持ちになります。特にこれから思春期を迎える女の子の心理的ダメージは大きいでしょうし、傷の存在から深刻な被曝をしたことがわかってしまい、結婚の障害になったりもするでしょう。また甲状腺を手術で取ってしまう以上、一生甲状腺ホルモン剤を服用しなければいけません。子どもたちにとっては、癌を発症するだけでも大きな大きなダメージを受けるわけです。
先日朝日新聞に「私は将来子どもを産んでもいいのだろうか」という福島の女子高校生からの投書が載っていました。本当に胸が痛みます。原発推進者はデマだヤラセだと言って済ませてしまうのでしょうか。
「0.5%は発癌率ではなくて癌死亡率」「癌は被曝被害のごく一部」「実際の被害の有無にかかわらず現地住民は大きな不安を抱えながら生きなければならない」などなど、まだまだ被曝被害は過小評価されているなあと感じます。この甲状腺癌33人というニュースが全く世の中で話題にならないことは本当に恐ろしいことだと思いました。
長文失礼いたしました。