たけまる のコメント

本編と少しズレた話題ですが、参考情報です。
「しゃべらせてクリ!」の冒頭で「読書離れ」について言及されていましたが、それに関連する興味深い内容の本に最近出会いました。

■飯田一史『「若者の読書離れ」というウソ』(平凡社新書)

2023年6月15日初版なので、出版されたばかりです。
本書では、小中学生の読書量は2000年代以降V字回復している上、高校生以上(大人も含む)となると「2人に1人が書籍を読む」「読書量は月平均1~2冊、本好きは4~5冊」「読書時間は平均値中央値共に30分程度」という数字が存在し、これはネットやスマホの普及に影響されることなく、昔からほぼ変わらないデータとして推移しているのだそうです。
つまり、本読みはいつの時代も一定割合で存在し続けている(人気となる内容は時代によって変化する)、ということだそうです。
ただし、「雑誌離れ」は顕著であり、それが出版不況と言われる所以ではないか、と。
著者は、「学校読書調査」「『朝の読書』で読まれた本」「読書世論調査」「出版指標年表」などの統計や、書籍のジャンルごとの売上や人気ランキングなど様々なデータを駆使して上記のような実状を解析しており、非常に読み応えがありました(今の高校生の間で、太宰治の『人間失格』が人気、という情報は極めて興味深かったです)。

言われてみれば、昔も車内で「読書をしている人」が多かったかというと、そこまででもなかった。
多くの大人や学生はマンガ雑誌・週刊誌・スポーツ新聞を読んでおり、それが今はスマホに置き換わっただけなのかもしれません(これは私の推測です)。
実際、休日に大型書店に行くと、親子連れで来店していたり、レジの待ち列がすごいことになっていたりと、案外本好きが増えつつあるのでは、と肌で感じていたところではありました。
岡本太郎『自分の中に毒を持て』、オルテガ『大衆の反逆』、サン・テグジュペリ『星の王子さま』、フロム『自由からの逃走』、『孫子』など、ドキッとするような書籍が目立つ位置に陳列されていたこともありました(こういうことは残念ながらは街中の小型書店ではなかなか難しい)。
実は車内でスマホを見ている人のうちの何割かは、自宅やカフェなど集中できる場所で、がっつり本を読んでいるのでは、と想像することも十分可能です。

で、個人的に気になるのは、世代変わらず読書率は「2人に1人」である、ということ。
つまり、層の厚い団塊世代と団塊ジュニア世代でも「2人に1人」しか本を読まないのだと考えれば……今の日本社会では「本を読まない高齢者・中高年」が世論の多数派となってしまっているのではないしょうか。
相も変わらずマスコミを盲信してテレビと新聞しか見ない者(恥ずかしながら、うちの母親がそうです)、ネットにかぶれてジャンキー化する者など、『華氏451度』の主人公の妻さながらのような醜態に陥るグループが、メディアの太客となっているのだろうかと考えてしまいます。

ともあれ、根源的に「何かを読んで、感じ、考えたい」というグループは、常に一定割合で存在するようで、若い世代に対してそこまで悲観的になる必要はない、ということがデータで読み取れたというのが大きな収穫でした。

No.46 13ヶ月前

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