また、キリスト教圏の男色忌避と言えば、イギリスの作家、オスカー・ワイルドが思い浮かびます。ワイルドは「男色罪」によって投獄され、不遇な晩年を送ったと言われます。そのイギリスでは2016年、同性愛で有罪になった故人数千人が赦免されたとBBCが報じていました。これも皮肉ですね。いまさらな、と思いますが、現在の価値観で過去を裁き、過去の裁きを現在が覆したりと、法も道徳もやはり万能ではない。 ワイルドの代表作の一つ、「ドリアン・グレイの肖像」では、バイセクシャルの美男子ドリアンが快楽至上主義の実践の果てに破滅していきます。彼の悪事は“他人には”最後まで隠しおおせますが、結末は「天網恢恢疎にして漏らさず」という有様でした。 人は、快楽を様々なことによって満たします。その快楽追及の果てに他人を犠牲にするのであれば、いずれなんらかの形で罰を受けるかもしれない。しかし人間は、他人の悪を糺し、罰しようとするときにもまた、快楽を感じてはいないか。それが恐ろしいところでして、歯止めのない復讐劇はいまや「ポリコレ」とか「キャンセルカルチャー」となって猛威を振るっているように思える。快楽主義者を罰しようとする人間が、正義の名を借りた復讐や暴露という快楽に囚われるようであれば、良くない結末を招くことでしょうね。
チャンネルに入会
フォロー
小林よしのりチャンネル
(ID:19522841)
また、キリスト教圏の男色忌避と言えば、イギリスの作家、オスカー・ワイルドが思い浮かびます。ワイルドは「男色罪」によって投獄され、不遇な晩年を送ったと言われます。そのイギリスでは2016年、同性愛で有罪になった故人数千人が赦免されたとBBCが報じていました。これも皮肉ですね。いまさらな、と思いますが、現在の価値観で過去を裁き、過去の裁きを現在が覆したりと、法も道徳もやはり万能ではない。
ワイルドの代表作の一つ、「ドリアン・グレイの肖像」では、バイセクシャルの美男子ドリアンが快楽至上主義の実践の果てに破滅していきます。彼の悪事は“他人には”最後まで隠しおおせますが、結末は「天網恢恢疎にして漏らさず」という有様でした。
人は、快楽を様々なことによって満たします。その快楽追及の果てに他人を犠牲にするのであれば、いずれなんらかの形で罰を受けるかもしれない。しかし人間は、他人の悪を糺し、罰しようとするときにもまた、快楽を感じてはいないか。それが恐ろしいところでして、歯止めのない復讐劇はいまや「ポリコレ」とか「キャンセルカルチャー」となって猛威を振るっているように思える。快楽主義者を罰しようとする人間が、正義の名を借りた復讐や暴露という快楽に囚われるようであれば、良くない結末を招くことでしょうね。