🐇 うさぎです。 今週号のSPAのゴー宣を読みました。 その中で、家政婦よしりんが、こう言っていますね。 「元正天皇は草壁皇子から皇位を継承したのではないですわよ。」 「元明天皇(女帝)から継いだのですよ。」 元正天皇の即位は、「男系」の継承なのか、「女系」の継承なのかという問題。これについての私のコメントは、おそらくは小林先生やスタッフの皆様に届くことはないのだろうなと思いつつ、それでも、やはりこれは指摘しておくことが正しいと信じて、また面倒くさいことを書きます。 これまで皇位継承の議論において使用されてきた「男系」という言葉の意味は、ある人物から見て、家系図を父子関係だけを遡っていって特定の祖先(男系派は神武に設定)にたどりつくような血筋のことを、「男系」の血統と呼んだわけですね。ある人物が、自分の父の父の父の…と遡っていって特定祖先にたどり着く場合、その人物は男系の血筋ということになるわけです。そして皇位の「男系継承」とは、このような意味での男系の人物(男女を問わない)が次々に天皇になっていく制度のことを指します。 対して「女系」とは、上の意味での「男系」とは正反対の意味を持ちます。ある人物から見て、家系図を母子関係だけを遡っていって特定祖先にたどりつくような血筋のことを、「女系」の血統と呼ぶわけです。そして皇位の「女系継承」とは、このような意味での女系の人物(男女を問わない)が次々に天皇になっていく制度のことを指します。 ちなみに、この上のように「男系」「女系」という言葉を理解するやり方は、社会学・人類学の伝統にのっとったものです。 さて、問題の元明→元正の皇位継承についてです。小林先生の定義では、皇位が、ある女性から別の女性へとひきつがれた場合、このことをもってして「女系」継承とみなすということになっています。ゆえに、元明→元正は、「女系」継承ということになります。 なお、小林先生の定義では、男性から男性へと皇位が移るのは、当然ながら「男系」継承ということになります。そして、男性から女性へ、あるいは女性から男性へと皇位が移るケースについては、おそらくは、それらに対する名称はないということになるはずです。たとえば斉明→天智のようなケースは、男系継承でもなく、女系継承でもない、ということになるはずです。 さて、ここで突然、クイズです。 <クイズ> 全く100%、仮定の話です。もしも女性天皇が公認されて、愛子様が天皇になられて、なんらかの事情により、その次の天皇に悠仁様の御息女(Aさま)がなられた場合、これは「何系」の継承になるでしょうか。 <こたえ> → 男系固執派にとっては、愛子様もAさまも、ともに男系の人物であるため、男系の人物から男系の人物への継承、すなわちこの継承は「男系」継承ということになります。 → 小林先生の定義では、女性から女性への継承であるため、シンプルに、この継承は「女系」継承ということになります。 以上で私が言いたかったのは、男系固執派と小林先生では、そもそも定義がまったく異なっているので、同じ現象でも、一方にとっては男系継承、他方にとっては女系継承、と正反対になってしまうことがあるということです。 そして、これは私自身の考えですが、そもそもお互いの定義が異なっているのに、その定義はおかしい、こっちの定義の方が正しい、元明→元正は「男系」継承だ、いや違う、「女系」継承だ、などと言い争うのは、とても不毛であるように思われます。正しい議論の仕方は、「君の定義はこれこれこういうものだから、元明→元正は男系継承になるわけだけれど、私の定義はこれこれこうであって、この継承は女系継承ということになるよ」と、きちんと言葉で説明することではないでしょうか。 長嶋氏の議論は、全体としては私もまったく賛成できませんが、少なくとも彼がここで「天皇かどうかではなく、血統の問題なのです」と言っているのは、彼は自分の定義(この定義においては血統がポイントになる)においては、元明→元正は男系継承ということになるんですよ、そこに出てくる天皇(の性別)はポイントではないんですよ、ということを主張しているものと思われます。それを茶化すのは、やはり私には、正しい議論のやり方であるとは思えません。 🐇
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うさぎです。
今週号のSPAのゴー宣を読みました。
その中で、家政婦よしりんが、こう言っていますね。
「元正天皇は草壁皇子から皇位を継承したのではないですわよ。」
「元明天皇(女帝)から継いだのですよ。」
元正天皇の即位は、「男系」の継承なのか、「女系」の継承なのかという問題。これについての私のコメントは、おそらくは小林先生やスタッフの皆様に届くことはないのだろうなと思いつつ、それでも、やはりこれは指摘しておくことが正しいと信じて、また面倒くさいことを書きます。
これまで皇位継承の議論において使用されてきた「男系」という言葉の意味は、ある人物から見て、家系図を父子関係だけを遡っていって特定の祖先(男系派は神武に設定)にたどりつくような血筋のことを、「男系」の血統と呼んだわけですね。ある人物が、自分の父の父の父の…と遡っていって特定祖先にたどり着く場合、その人物は男系の血筋ということになるわけです。そして皇位の「男系継承」とは、このような意味での男系の人物(男女を問わない)が次々に天皇になっていく制度のことを指します。
対して「女系」とは、上の意味での「男系」とは正反対の意味を持ちます。ある人物から見て、家系図を母子関係だけを遡っていって特定祖先にたどりつくような血筋のことを、「女系」の血統と呼ぶわけです。そして皇位の「女系継承」とは、このような意味での女系の人物(男女を問わない)が次々に天皇になっていく制度のことを指します。
ちなみに、この上のように「男系」「女系」という言葉を理解するやり方は、社会学・人類学の伝統にのっとったものです。
さて、問題の元明→元正の皇位継承についてです。小林先生の定義では、皇位が、ある女性から別の女性へとひきつがれた場合、このことをもってして「女系」継承とみなすということになっています。ゆえに、元明→元正は、「女系」継承ということになります。
なお、小林先生の定義では、男性から男性へと皇位が移るのは、当然ながら「男系」継承ということになります。そして、男性から女性へ、あるいは女性から男性へと皇位が移るケースについては、おそらくは、それらに対する名称はないということになるはずです。たとえば斉明→天智のようなケースは、男系継承でもなく、女系継承でもない、ということになるはずです。
さて、ここで突然、クイズです。
<クイズ>
全く100%、仮定の話です。もしも女性天皇が公認されて、愛子様が天皇になられて、なんらかの事情により、その次の天皇に悠仁様の御息女(Aさま)がなられた場合、これは「何系」の継承になるでしょうか。
<こたえ>
→ 男系固執派にとっては、愛子様もAさまも、ともに男系の人物であるため、男系の人物から男系の人物への継承、すなわちこの継承は「男系」継承ということになります。
→ 小林先生の定義では、女性から女性への継承であるため、シンプルに、この継承は「女系」継承ということになります。
以上で私が言いたかったのは、男系固執派と小林先生では、そもそも定義がまったく異なっているので、同じ現象でも、一方にとっては男系継承、他方にとっては女系継承、と正反対になってしまうことがあるということです。
そして、これは私自身の考えですが、そもそもお互いの定義が異なっているのに、その定義はおかしい、こっちの定義の方が正しい、元明→元正は「男系」継承だ、いや違う、「女系」継承だ、などと言い争うのは、とても不毛であるように思われます。正しい議論の仕方は、「君の定義はこれこれこういうものだから、元明→元正は男系継承になるわけだけれど、私の定義はこれこれこうであって、この継承は女系継承ということになるよ」と、きちんと言葉で説明することではないでしょうか。
長嶋氏の議論は、全体としては私もまったく賛成できませんが、少なくとも彼がここで「天皇かどうかではなく、血統の問題なのです」と言っているのは、彼は自分の定義(この定義においては血統がポイントになる)においては、元明→元正は男系継承ということになるんですよ、そこに出てくる天皇(の性別)はポイントではないんですよ、ということを主張しているものと思われます。それを茶化すのは、やはり私には、正しい議論のやり方であるとは思えません。
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