Dr.U のコメント

>>177  酔いどれカエル坊主さま

 こんにちは、うさぎです。少しコメントするのを遠慮しようと思っていたのですが、小林先生もコメントをしてくださって、ちょっと説明責任が出てきているので、お答えします。

 ご質問は、重要なポイントをついていると思います。

 一つの世代から次の世代のあいだの一区間だけ、つまり父親から子供へ、あるいは母親から子供へ、という繋がりの区間については、前者は「男系」、後者は「女系」と呼ぶことはできないのか、ということですね。

 はい、まさにこの意味で、小林先生も「元正も竹田も女系じゃないか」みたいな言い方をされているのだと思います。

 私も実は、こういう意味で「女系」という言葉を用いてもいいのではないか、そういう言い方をしても別に間違いとはいうわけではないだろう、というようなことが主張できないか、かつて考えてみました。

 結論は、無理して言えば、言えないことはない、くらいの感じです。

 しかし一般的には(人類学系の議論では)、財産や地位の《父から子への相続・継承》、そして《母から子への相続・継承》は、前者は「父方からの相続・継承」、後者は「母方からの相続・継承」という言い方をすることが多いようです。あるいは、前者は「父系の相続・継承」、後者は「母系の相続・継承」というような言い方も、あるはあるようです。高森先生が「元明ー元正」の皇位継承について語るとき、しばしば、「元明ー元正の継承は女系(母系)と言える」みたいに、わざわざ「(母系)」という言葉を付け加えていらっしゃるのは、このことのせいだと推察します。

 そういうことで、二つの世代間(父から子、あるいは、母からの子という一区間)の相続・継承だけに注目して、そこに母から子へのラインが成立していれば、「ほら、ここには女(母)のライン、すなわち女(母)系が入り込んでるじゃないか」というような言い方をするのも、不可能では、絶対に無理という訳では、ないです。いえ、何よりも、私自身が、このようなロジックで、小林先生や高森先生の言い方を正当化できないかと考えました。

 しかし、やはり、男系、父系、女系、母系、という用語が、問題になります。これらの言葉が人類学や歴史学の場で用いられるとき、基本的には、多くのケースにおいては、それは二世代間にとどまらず、五世代、十世代と、数多くの「区間」から成り立つルートのことを想定していることは、ほぼ間違いないです。
 
 もしも小林先生が、「男系固執派は男系男系とうるさいが、歴史を見ると、《母親から子へ》と皇位が継承されたケース、《子供が母方から》皇位を引き継いだケースもあるのだから、あまり男系男系言うんじゃないよ」くらいの言い方をされるのだったら、問題はないかもしれません。あるいは、「歴史的には皇位は母方から継承することもあったのだから、そのこと(その二世代間において起こった皇位継承の出来事)だけを見れば、愛子さまが天皇になって、さらにそのお子様が皇位を継承したとしても、問題ないじゃないか」くらいの言い方だったら、男系固執派から突っ込まれることはないかもしれません。

 しかし、繰り返せば、「男系」「女系」、という言葉は、もう実際の使われ方として、慣用的に、父の父の父の…とか、母の母の母の…とかいう考え方と、しっかりと結びついてしまっているのです。

 いや、もちろん、そんな風に考えるのは、ただ家系に興味のある歴史学者とか、親族構造に興味のある人類学者とか、そういう一部のマニアックな人たちだけだろう、一般の人たちはそんなことは思わないよ、と、言われたら、うん、そうかも、そうなのか? そうかもしれない… という感じです。

 ただ、論争の相手である男系固執派や政府与党の人々は、間違いなく、がっつりと、以上の意味での「男系(父の父の父の…)」の概念にしがみついています。だからこそ、私は、まずこういう人たちに対して「双系」という概念が存在することを明確に認識させて、それを議論の突破口にすべきだ、と考えた次第でした。

 結果としては、小林先生がおっしゃるように、これは「マニアックなはなし」ということになるのかもしれません。確かに、国民全体を動かすには、「双系」の概念について説明して理解してもらう暇はないかもしれません。スローガンというのはシンプルで分かりやすい必要があり、その点では「女性天皇・女系天皇を公認せよ!」というのは、分かりやすい。意味はなに?と聞かれれば、「愛子さまが天皇に、さらに、そのお子様が天皇になれるようにするということだよ」と答えれば、国民は、なるほどそうかと、こちらの考えを受け入れてくれるでしょう。

 マニアックですよ、わたしは、どうせ、ぷんぷん。
 うさぎ

PS ありんこさま 
 私の愚論が多少なりともお役に立ったようで、うれしく思います。言葉は、本当に怖いです。中立的なふりをして、それ自体がすでに強い偏見や価値を含んでゐたりします。うっかり使うと、相手の罠にかかってしまうので、気をつけたいです。

No.185 19ヶ月前

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