おっ! のコメント

以下、宮沢さんを擁護するものではないので悪しからず。

自然科学は最終的にはデータに基づかなければなりません。どんなに理路整然とした美しいと思われる理論でも、セルフ・コンシステントな理論は自然科学ではありえないからです。特にウイルス感染などの複雑系を対象にすれば、人間の頭では想定していないことが入り込むと思いますので、様々な観点で行われた実験によるデータを突き合わせる必要があるでしょう。感染経路と一言で言っても、ウイルスがどのように伝搬するのか、どのように体内に侵入して増殖するのか、またそれぞれの過程がどのような割合で影響し発症に結びつくのかを検討しなければならないように思います(私はこの分野の専門家ではありません)。

科学者がそれぞれの過程で実験した結果を発表する場合は、データに間違いがないか、データにはどのようなバイアスが入り込んでいるのかを注意深く検討し、また論文そのものに結果の解釈として不都合な部分までも含めて投稿します。まともな学会であれば、そうでなければ受理されません。大きな誤りがあれば科学者人生が終わるほどの恥ですので、何かを発見したという主旨の論文でも必ず条件付きの結果として発表します(分野により作法の差はあると思います)。種々の観点や違った条件、同一条件で他者が行った実験結果や計算結果の蓄積と、それらを基にした議論が科学的な手法による真理の探求です。しかし、とにかく時間はかかるし、長年の研究の蓄積により理解したと思っていた現象や、それを説明できる理論でも、ひとつの実験結果で覆ることもあります。

このように自然科学による知見は、現時点で人類が持ち得る最大限の自然に対する理解ですが、人間社会の未来を予測できるようなものではありません。よって、政策決定にあたって自然科学は参考にするべきだと思いますが、それだけでは根拠にはならないと考えています。また、科学的に正しそうな事柄でも、人々がそれに従うかどうかは別問題のようにも思います(それでは何を頼りにすべきかというのはまた別の議論)。実際に会社組織などでマスクの強要がまかり通っているのは感染対策ではなく、マスクをしていないと濃厚接触者扱いされて、その後の対応が面倒だというのが本音ではないでしょうか?つまり感染経路やマスクの効果の問題ではなく政策の問題の気がしています。

特定の納得ができる理論とそれを支持する実験結果をもって何かを主張するのは自由ですが、注意が必要だと思います。「科学で最終的な結論が出た」などということは無いからです。そんなことを言う科学者は、科学者でも専門家でもありません(これは相対主義ではありません)。

No.145 30ヶ月前

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