そこで、せめて国民がどうあるべきか､日本のマスコミがどうあるべきかを考えながら、次に述べられていた「マスコミ」の弊害について紹介します。
「①マスコミは一方的な伝達であるため、受け手は、それを確かめ､調査し､反問することができない。誤報は大衆をある方向に導く結果となる。しかも、誤報は時として、故意になされる場合もある。
②マスコミの事業は、営利企業として営まれているために、大衆に媚びる傾向がある。そのため、低俗な文化が流行し、趣味も考え方も、画一的になって、個性が失われていく傾向が強くなる。
③マスコミによって価値の転換が行われる。マスコミによって、価値のあるものは、富であり、享楽であり､美観であり、権力であり､名声やスリルであるとされる。悲惨な一家心中よりも、俳優のスキャンダルやゴシップが大きく扱われるというように、価値の転換が行われる。
④マスコミは、人間の精神を断片化する。この傾向はとくに、ラジオやテレビに著しい。15分ないし、30分ごとに、そこに何の連絡もなくかわる放送内容は、確かに人間の心を断片化する。
⑤マスコミは、人間の態度を受け身にかえてしまう。テレビは見るものはなく、見えてくるものであり、ラジオは聞くものではなくて、聞こえてくるものである。新聞とても、何かを主体的に求めて読むものではなく、読まされるものである。読まなければ､見なければ何となく物足りない気持ちになり、そこには考えるということもない。人間は受け身一方の態度が養われていくのである。」