既出のトピックかもしれませんが、マンガ『100日後に死ぬワニ』が映画化されるにあたり、タイトルが『100日間生きたワニ』とあらためられたのだそうです。 コロナ禍において、「死ぬ」というネガティブな単語を用いるのが問題視されたらしいです。 私は原作の内容については全く知らないのですが、死生観皆無の幼稚な連中の感性に噴き出してしまいました。 小説『君の膵臓を食べたい』、マンガ『ジョジョの奇妙な冒険』など、生命の有限性を現実のものとして(場合によっては肯定的に)受け入れ、故人の生き様が残された者の心の中で輝き続ける様を描くフィクションも数多いと思うのですが、もはやタイトルに「死ぬ」が入るだけでもイヤだというレベルにまで日本人の感性は劣化してしまったのかもしれません。 もう一点、現在放送中の朝ドラ『おかえりモネ』より。 ヒロイン・百音(清原果耶)の職場の師匠的存在であり、彼女を娘か孫のように可愛がっている新田サヤカさん(夏木マリ)というキャラクターに魅了されます。 百音は気象予報士試験に合格し、宮城を出て上京することを決心しますが、これまで伴侶を持たずにずっと独りぼっちだったサヤカさんに気を遣って、そのことを言い出しかねています。 それを見抜いたサヤカさんが発したセリフ―― 「仁に過ぎれば弱くなる。老人を甘やかしてはいけない。私はずっと一人だったのだから、これから先も大丈夫」 その後、本心は寂しいのだけど、百音の夢を妨げてはいけない、自分はその夢が成就することを祈る立場であろうと踏ん切りを付ける場面が描かれています。 これこそが、次世代へバトンを渡す老人の「あるべき姿」なのかなと思います。 自分の私的な生に執着するのではなく、潔く若者に活躍の舞台を明け渡すという「保守」の鑑とも言えるスタンス。 特に「老人を甘やかすな」という表現にはドキッとしました。 敬老精神は大切ですが、「敬う」「いたわる」と「甘やかす」って全く異なりますよね。 老人を「聖域の中の弱者」扱いし、結果的に彼らを甘やかすことにつながる報道や言説があまりにも多くなっていますし、残念ながらそれで増長してしまった老人も増えてしまったように思います(個人的には車内の優先座席って無い方が良いと思います)。 今回の朝ドラ、基本的には東日本大震災を経験した宮城の人々に焦点を当てた内容なのですが、コロナ禍の日本にも関連するような要素もいくつか見受けられ、ヒロイン演じる清原果耶の素晴らしさも相まって、昨年の『エール』に続く大当たり作品だと感じています。
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小林よしのりチャンネル
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既出のトピックかもしれませんが、マンガ『100日後に死ぬワニ』が映画化されるにあたり、タイトルが『100日間生きたワニ』とあらためられたのだそうです。
コロナ禍において、「死ぬ」というネガティブな単語を用いるのが問題視されたらしいです。
私は原作の内容については全く知らないのですが、死生観皆無の幼稚な連中の感性に噴き出してしまいました。
小説『君の膵臓を食べたい』、マンガ『ジョジョの奇妙な冒険』など、生命の有限性を現実のものとして(場合によっては肯定的に)受け入れ、故人の生き様が残された者の心の中で輝き続ける様を描くフィクションも数多いと思うのですが、もはやタイトルに「死ぬ」が入るだけでもイヤだというレベルにまで日本人の感性は劣化してしまったのかもしれません。
もう一点、現在放送中の朝ドラ『おかえりモネ』より。
ヒロイン・百音(清原果耶)の職場の師匠的存在であり、彼女を娘か孫のように可愛がっている新田サヤカさん(夏木マリ)というキャラクターに魅了されます。
百音は気象予報士試験に合格し、宮城を出て上京することを決心しますが、これまで伴侶を持たずにずっと独りぼっちだったサヤカさんに気を遣って、そのことを言い出しかねています。
それを見抜いたサヤカさんが発したセリフ――
「仁に過ぎれば弱くなる。老人を甘やかしてはいけない。私はずっと一人だったのだから、これから先も大丈夫」
その後、本心は寂しいのだけど、百音の夢を妨げてはいけない、自分はその夢が成就することを祈る立場であろうと踏ん切りを付ける場面が描かれています。
これこそが、次世代へバトンを渡す老人の「あるべき姿」なのかなと思います。
自分の私的な生に執着するのではなく、潔く若者に活躍の舞台を明け渡すという「保守」の鑑とも言えるスタンス。
特に「老人を甘やかすな」という表現にはドキッとしました。
敬老精神は大切ですが、「敬う」「いたわる」と「甘やかす」って全く異なりますよね。
老人を「聖域の中の弱者」扱いし、結果的に彼らを甘やかすことにつながる報道や言説があまりにも多くなっていますし、残念ながらそれで増長してしまった老人も増えてしまったように思います(個人的には車内の優先座席って無い方が良いと思います)。
今回の朝ドラ、基本的には東日本大震災を経験した宮城の人々に焦点を当てた内容なのですが、コロナ禍の日本にも関連するような要素もいくつか見受けられ、ヒロイン演じる清原果耶の素晴らしさも相まって、昨年の『エール』に続く大当たり作品だと感じています。