また難しいのは、世の中の「お約束」が、あまりに多様かつ流動化し過ぎた結果、制御不能に陥っていることでしょう。例えば、男女平等という約束は、それを掲げる者に絶対の優位性を与えるに至り、いかなる理不尽な物言いでも正当化される勢いです。自分が人生で受けてきた理不尽を、ここぞとばかりに「理不尽に」吐き出してもいいと思っている、そうした人間が炎上騒ぎに参加しているのでしょう。

他人に理不尽な要求を飲ませようとするのは、悪しき権力者の行為です。復讐心に囚われた人々は、結局のところ、自らが新たな独裁的権力者として君臨するのが望みであって、それでは従来の力関係が逆転するだけでなんの解決にもなりません。何が妥当な約束や期待なのか、それがどうしたら守られるのかを、正面から議論することが肝要です。その議論をすっ飛ばして、石を多く投げて相手を追いやったほうが勝ちなどというのは、野蛮でしかありません。