基礎医学研究者 のコメント

>>132
告知いただきました昨日のYouTubeラジオ、楽しく視聴させていただきました。今回非常に印象的だったのは、「コロナ渦」を終わらせるためにどう行動すればが良いのか?ということの1つの試みが表現されていたような気がしたことであります(このことにつきましては、敬意を表します)。

さて、今回僭越ながら、少しだけ補足をさせていただきました。ちぇぶ様がラジオで言われていました、”HIVのヒトの血液型の違いで耐性の人もいる”というのは、おそらくヒトのリンパ球表面に発現するHIVに対する受容体における遺伝子変異のことを指しているのだと思います。

AIDs(エイズ)の原因ウイルスであるHIVは、ヒトのリンパ球T細胞(正確には、CD4+T細胞)に侵入して増殖し、自分のゲノムをヒトの染色体に挿入する形で、宿主であるヒトに寄生します。そのような状態になりますと、HIVに感染したヒトのCD4+T細胞は、もしも治療介入がないとすると、HIVによってT細胞が破壊されて減少を続け、最終的にはエイズを発症して死亡してしまいます。ところが、HIVに感染したとしても、ある種の人々はCD4+T細胞の数はなぜか減少せず、体内のHIVのウイルス粒子数も少ない状態に保たれています。

前置きが長くなりましたが、この理由、すなわちHIVに耐性があってエイズを発症しない人々には、HIVに対する受容体(本来はケモカインというサイトカインと類似した因子に対する受容体)の遺伝子であるCCR5に変異が存在する、というものです。そのような状態では、CD4+T細胞表面にCCR5受容体が発現しないので、HIVはCD4+T細胞に侵入することができず、増殖することが困難だというわけです(言い方を変えると、増殖できないHIVが血流を漂っているような状態かと思います)。
 さて、CCR5受容体の遺伝子変異は私たち日本人には見られないのですが、一方なぜか北ヨーロッパの白人には10数パーセント存在するようです。なぜ北ヨーロッパの白人に多いのかは十分にわかっていないと思いますが(HIVの流行が1980年代からと仮定すると、この変異がHIVの出現に併せて拡がったとは時間スケール的に考えにくいため)、もしかすると過去に流行した様々な感染症に対して淘汰(進化)が起こった結果この集団で維持された変異であり、それがHIVに対しても有利に作用した可能性があります(これはウイルスによる水平進化とは異なるメカニズムですが、よしりん先生言われるように、我々人類はウイルスと共存する形で進化しているのだと思われます)。

あと、大した話ではないのですが、ちぇぶ様が言われていました宿主(ヤドヌシ)は、研究の業界では”シュクシュ”と読みます(私は以前はよく知らなかったのですが、”ヤドヌシ”と読むと、「旅館の宿の主人」という別の意味になってしまうようであります)。

以上、ご参考までに。

No.169 47ヶ月前

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