Dr.U のコメント


 新型コロナではうんざりさせられるニュースが多いので、ひとつ「疫病」に関して、わたくしウサギ先生が、面白い小話をご紹介します。
 皆様は京都で毎年7月に行われる「祇園祭」が、もともとは疫病を鎮めるために始められたお祭りであることを、ご存じだと思います。八坂神社のHPには、この祭りについて、次のような説明があります。

「今からおよそ1100年前の清和天皇の貞観11(869)年に、京洛に疫病が流行し、庶民の間に病人、死人が多数出ました。 そこで66本の矛を立て、洛中の男児が祇園社の神輿を神泉苑(中京区御池通大宮)におくり、悪疫を封じ込む御霊会をおこなったのがはじまりであると伝えられています。その後、祇園社の興隆とともに、"祇園御霊会"とよばれ、この名が略されて単に祇園会とよばれるようになりました。はじめのころは、疫病流行の時だけ不定期に行われていましたが、円融天皇の天禄元(970)年からは、毎年6月14日におこなわれるようになりました。」

 ここに書いてありますように、祇園祭の始まりは、洛中の民衆が「神泉苑」というところで行ったお祭りです。面白いのは、この民衆のお祭りの内容です。この祭りは、疫病(インフルエンザだったろうと言われています)が起きてたくさんの人が死んだときに催されたものですから、当然、疫病を引き起こす悪霊みたいなものをやっつけるべく、皆が怖い顔をして、お経とか呪文とか唱えながら「疫病退散!」とやったと思うでしょう。確かに、そういうこともやりました。ところが! 実際は人びとは、それ以外に、とんでもないことをやっていたのです!
 当時の『三代実録』という記録には、次のように書かれています。

「始自京畿。爰及外國。毎至夏天秋節。修御靈會。徃々不斷。或礼佛説經。或歌且舞。令童貫之子粧馳射。膂力之士袒裼相撲。騎射呈藝。走馬爭勝。倡優戯。遞相誇競。」

 なんだか難しい漢字が並んでおりますが、ざっくり言いますと、疫病が起こった時、近畿のあたりの民衆が勝手に集まってきて、競馬をやったり、弓を射る遊びをしたり、歌ったり、踊ったり、あるいは相撲をとったりして、わいわいがやがや、歓声挙げて、おしあいへしあいしながら、マツリを楽しんだ、というのです。
 当時の人だって、疫病が病人との接触で起こることくらい知っています。人との接触を避けたいと思うのが、普通です(実際に、貴族たちは人との接触を避けて家に閉じこもっていたようです)。それなのに民衆は、たくさんの死者が出てるのに、超「3密」のお祭り騒ぎ、馬鹿騒ぎです。なんでこんなことしたのでしょう?
 ひょっとしたら、昔の人たちは、伝染病というものは結局は避けることができないもの、それならば、病気にかかる人はさっさとかかってしまって、さっさと「けりをつける」ほうが、最終的に共同体に与えるダメージは一番少なくて済む、ということを経験的に知っていたのかもしれません(あくまでも私の推測の範囲ですが)。
 もし当時の人々が、現在の私たちの新型コロナ騒ぎを見ていたら、なんと言うでしょうね。「あんたら、何をうだうだとやってるんだい。疫病なんて、みんなでわっと騒いで、楽しんで、かかる人はさっさとかかってしまったほうが、早いんだよ! 病は気から。家でびくびく、じっとしてると、元気な人も病気になっちゃうよ!」 …うーん、確かに、家にこもってるとストレスがたまるし、免疫も弱っていきそうです。それなら昔の人たちのように、一気に皆で集まって、騒いで、楽しんで、それでも病気にかかる人はかかって、さっさと集団免疫を作った方が、よっぽどいいのではないのでしょうか(笑)。
 以上、うさぎ先生の小話でした。

No.155 50ヶ月前

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