M.O のコメント

M.O
No.145 (2020/09/28 21:06)
ここ数週間、心身共に疲弊していたのですが、ようやく「仕事にやり甲斐を感じて、楽しくしんどく働く」という以前の状態に戻り、気力体力が爆発的に増進してきました。
やはり人間は仕事で実存を得ないと、命が縮んでしまいますね。

さて、ラジオ番組『伊集院光の深夜の馬鹿力』で、コロナに関する海外の面白いニュースが紹介されていました(Yahoo!ニュースでのリンク先 https://news.yahoo.co.jp/articles/236c8dbed81601baf1c18dacabf6cea1413437f2)。
要約すると、ドイツの11部にあたるサッカーリーグのとあるチームが、コロナ感染者と接触したという選手が属するチームとの試合を延期したい旨を訴えた(当人は陰性だった)が認められず、試合放棄すれば罰金(といっても日本円で25,000円程度)が科されてしまうため、試合成立要件ぎりぎりの7人の出場選手数で戦ったのだそうです(少しでも当該選手と接触する選手を減らしたかった)。
ここまでならば、「感染に神経質すぎるエピソード」で終わるわけですが、スゴいのはここから。
監督は「勝利よりも安全」を優先し、当該選手と「距離を取れ・ボールを奪わなくていい」と指示。
結果、当該選手はお構いなしにゴールを決め、試合は37-0というサッカーとしては有り得ないスコアで幕を閉じたとのことです。

この話を聞いた時、当初私は「後世の笑い話になるエピソード」だと感じたのですが、今の日本のことを考えれば全然笑えないな、と思い直しました。
「距離を取れ・ボールを奪わなくていい」――この方針を社会生活の規範に落とし込んだのが「ステイホーム」なのではないでしょうか。
このサッカーチームはアマチュアなので、何もせずとも給料が貰えるわけではないし、選手ら自身も感染に不安を感じる中でボランティア的に7人が出場したという事情も、日本の「ステイホーム」とは少し異なる部分ではあります。
でも、いかにアマチュアとはいえ、37のゴールを面白いように決められ、サッカー選手として悔しさや屈辱を感じないはずがはずがありません。
途中から、少々のリスクを冒してディフェンスしたいと感じるようになった選手もいたかもしれない。
何のためにサッカーやってるんだろ、と虚無感がつのってきた選手もいたかもしれない。
でも、ディフェンスは御法度だし、サッカーよりも感染予防の方が大事だから、「ステイヒア」を遵守しなければならない。

ピッチで棒立ちになっている選手の姿は、傍目から見れば滑稽でもあり、哀れでもあるわけですが、これは唯々諾々と「ステイホーム」に従った日本人そのものなのではないでしょうか。
しかも、こんな無茶な方針を立ててまでも試合をした理由は、罰金を払いたくなかったからです(チームの代表者は、我々にとっては決して小さな金額ではないと主張)。
「アスリートとしての尊厳」よりも25,000円の方が大事――お店を閉めて大人しく給付金貰っとけよ、という発想に似てませんか?
「経済より命」が持論の人にとっては、このニュースは衝撃でも笑い話でもなく、「コロナで世界は変わりつつあるんだ」と納得できるエピソードとしてとらえてしまいそうです。

一方で、何でもいいから「パンとサーカス」さえ得られればそれでいい、という大衆は、こんな試合でもそこそこ楽しんでしまうのかもしれません。
そうなった時に、高い技術や技法を追求し続ける一流のプロの中から、自らの実存を見失ってしまう方が出てくるのではないでしょうか。
大衆は「リスクを冒してボールを奪いにいく」のを期待しているのではない、「棒立ち」でも何でも楽しければそれでいいということだったんだ、と1ミリでも感じてしまえば、心の中でガラガラと音を立てて何かが崩れ落ちてしまった、というプロもおられるのではないか、と想像してしまいます。

ちなみに伊集院光の喋りは相変わらず絶好調でした。
木蘭先生がブログで「爆問の田中が感染して、コロナをネタにしづらくなった」という別のラジオ番組での発言が紹介されていましたが、ギリギリのラインでうまいこと皮肉を効かせていて、行間を読めばなかなかの事を喋っていたなという印象でした。

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