わさビーフン のコメント

スパ買ってゴー宣第93章、拝読しました。 
たった8ページで、「日本人とはどういう存在か」を、完全に表現している。
しかもユーモアも毒っ気もシリアスも皮肉も、
創作の必須要素全てバランス良くぶち込んで、
さらに己れの主張をこんなに雄弁に明確に描ける、
誰が読んでもわかるように、主張を納得できるように描ける人はいるだろうか?
たとえ他の漫画家が描いても、インパクトが弱かったり嫌味になりすぎたりギャグが足りなかったりと、
バランスが悪いし、主張もいまいち納得がいかない、心にあまり響かないものになるだろう。 
世と人の事象を何十年もずっと哲学してきて、さらに漫画の腕を過酷に錬磨してきた人だから、
たった8ページでこんな内容が描けるのだ。これは他の表現者の誰もできない。 
今回は新堕落論のようにどんな立場の人間も自己慰撫できない厳しさがある。
例えば飲食店に同情を示しつつも、破滅するまで自粛に応じてしまう愚かさを指摘している。
新堕落論好きな私としては今週の回の厳しさと毒々しさがスゴい好き。
「民度が低く蓄度が高いだけだ!」の日本人に対するとどめの言葉と
多治見要蔵スタイル(妙にかっこよい)が特に良かった。 
こういう強烈なコマでも家畜を可愛く書いていたりと、バランスを、読み手の感じる印象を考えて、
最後まで読ませる工夫をしていて、プロの仕事ぶりと熟練を感じる。
よしりんの嘲笑う顔が見事だ。笑っちゃうし、毒もすごい。なんだか今までのコロナ編の作品より、
毒気の追加と、より攻めの姿勢になっている感じがする。 

相当、バランスと今の読み手のことを考え抜いて作られているというのが感じられた。
以前、新堕落論発売して少したってのブログで「今の時代は1500円あるなら本を買うことを選ばずにパンケーキを食べる方を選ぶ」「悟ってしまったが誰も本を読んでいない、映画すら見てない」ようなことを書かれていて、確かに読む力や知識の蓄えは昔より全体的にかなり衰えているだろうから、大変なんだなと思ったが、辻説法を経て見事に新しいバランス感覚を体得されたんだなぁと感じた。

ただ、自分としては新堕落論以上の厳しい作品。知的レベルと覚悟を問われる、自己慰撫できない、
読み手を再起不能にする作品を読みたいとも思う。
今の日本の平均的な読み手のレベルに合わせないと、やはり刊行するのは日本じゃ難しいのだろうか?
映画産業だとキューブリックやコッポラやデ・パルマやリドリー・スコットなど巨匠監督は
みんな自分の感性に任せて作家性ふんだんな映画作ってるのに。
で結局は、そういうどこにも似てない作品がずっと忘れられずに残っていくんだが・・・。  
日本をもっとよしりんが暴れられる環境にしないと。 スゲー勿体ない。

No.295 45ヶ月前

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