今号の感想を記す前に、新型ウイルスやハンセン病の話を聞いていて、思い出したアニメに「クロスアンジュ」という作品があります。紹介も兼ねて記すことにいたします。

　その話の中では、健常者は「マナ」と呼ばれる超能力を有しており、稀に女性の中にマナを持っていない者が生まれた場合、「ノーマ」と蔑まれ、「ノーマ管理法」に基づき社会から隔離され、ロボットを操っての異世界から到来するドラゴン退治という作業を押しつけられます。物語はヒロインの皇女のアンジュが（本人もお供のサポートのため気づいていなかったのですが）実はノーマだったとばれ、隔離されて、世界の裏側で起こっている真相に気づくという、ある意味ありふれたものではあるのですが、この作品はわざと（普通の人の持ち得ない）超能力を大多数のものにし、異端者を「ノーマル」とすることで、日本人の和の精神や村社会の実態を浮き彫りにしたのではないか、と自分は感じました。

　この「ノーマ」の場合と同じく、現在コロナウイルスの「感染者」とか「陽性」とかいうことが話題にされていますが、人間は、大多数や集団に所属し、専門家や有識者という上位者の意見に従っている安心感の方が、自分が聖なることや正義を行っているという使命感と誤認され、真実を知りたいという探究心に勝ってしまうものなのか、無知の善良さと、人間が群体であることによって生じる差別心や狂気は紙一重のものなのか、と思っています。