不倫バッシングブームからその傾向はみて取れましたが、昨今の人々は「ウチ」と「ソト」に人間をバッサリと分けて、後者を執拗に叩くことに耽溺している感があります。コロナ禍でその歪みが頂点に達した結果、社会は破滅的な打撃を受けたのではないでしょうか。みな、それがまだ分かっていない。分からないほどにおかしくなってしまったのでしょう。他人に対する不寛容のツケは、いずれ自分に跳ね返るものです。だから昔はお互い様だと言ったのですが、いまやそれは死語になりました。

形骸化した「お互い様」は、ただただ理不尽にお互いに無言の忖度を強いる「自粛圧」となっています。繊細な情理が存在しなくなった世間の残骸だけが、人々を縛る枷となり残り続けている。私にはそのように思えてなりません。

それにしても武田徹氏の著作がこの世の中でほとんど取り上げられないことに恐ろしさを感じました。臭いものには蓋をするというのも、世間の作法の一つでしたね。見ざる聞かざる言わざるの三猿へと転落していくのが、コロナ後の日本人なのかもしれません。