私の場合は、自分というよりも老親の心配でした。人間、我が身の覚悟が出来ていても、いざ身内を人質に取られると弱いものだと思います。「大切な人を守るために」という自粛言説の、罪深いところはそこです。

ただ、いつかはみんな死ぬんです。だから、今を精いっぱい生きるしかない。親を老衰で看取ろうなんて、日本人の死因からしたら、なかなか難しいことです。漠然と、あっさり亡くなってくれるだろうなんて甘い考えをしていたことを、コロナで思い知らされました。病気や事故で苦しんで死ぬとしても、覚悟して看取るしかない。家族というのは、苦楽を共にしてこそ、家族なのです。友人も恋人も、いつか死ぬかもしれない、逆に自分が残してしまうかもしれない。それでも、恐怖で膝を抱えて怯えずに、外に出て「偶然」を生き延びていくしかない。それがほんとうの「真っ当」ということではないでしょうか。