他人にうつすと人殺しになるかもしれない。これは善人にほど覿面に効く「呪詛」です。そして、あまねく疫病を地上から駆逐することがおよそ不可能である以上、無体かつ理不尽な恫喝でもあります。疫病を悪意でばら撒くのは論外としても、日常とのバランス感覚を持って対処すればいいだけでしょう。しかし、その感覚を破壊するほどに、自粛言説は世に溢れかえってしまった。もはや、それは他者への思いやりなどではなく、害悪へと成り果てていると言っても過言ではありません。

冗談ではなく、日本に蔓延る自粛言説は、今やコロナ真理教と形容して差し支えないと思います。コロナという祟り神を鎮めるために物忌みをせよ、と述べている現代の神官たちは、そのほとんどが食うに困らぬ富者でもあるでしょう。人々が祟りを恐れれば恐れるほどに、彼等もまた力を増す。庶民とは真逆に、彼等はこの災厄の中でこそ生き生きとする。人々が恐怖で怯えれば怯えるほど、わが意を得たりと感じ、爛々と目を光らせてくる。そこに狂気が宿るのを、見逃してはいけません。人が人に齎した災厄の多くは、この恐怖と狂気こそが原因ではないですか。それは疫病よりも、もっと性質が悪く、世界に禍根を残すものだ、と私は思います。

時代を経ても、人の本質は変わらない。そのことを、とても虚しく感じます。
（前回のコメの訂正です。実名→ペンネームでした。）