SPA!とFLASHの感想も記しておきます。

SPA!
実を言うと、私の大久保利通観はよしりん先生と異なっています。この人はこの人なりに真面目な人であったのだろうと思うし、『大東亜論』でも描かれていたように、私腹を肥やすということはしておらず、むしろ借金だらけだったようですし、死の間際に西郷からの手紙をよんでいた、というエピソードは、西郷達を敗者としてあざ笑っていたのでしょうか。人間は複雑なもので、時代劇に出てくるような単純な悪者はいない、と思います。

それでも、『大東亜論』で大久保の悪の面を強調したことには価値があると思います。それは明治が古い日本の価値観を否定し、新しいものを摂取することのみを是とした弊害をよくあらわしているからだと感じるからです。あるいは、仕事などにおいても「結果」がすべてで「過程」はどうでもよい、みたいな考えが見え隠れしているようにも思えます。

一度や二度負けたからと言って、それまでのすべてを否定し、全部を修正・改正・更新する、という必要はないと思うのですが、私たちはそのあたりをしばしば誤解します。失敗したら何かやりかたがまずかったのだろうと反省するけれども、でもどこが間違っていたのか分からずに、「迷走」することが多いとも感じられるのです。あるいはずるい人の口上に乗っかってしまい、反省しなくても良いことまで反省してしまう、ということもあり得ます。上記のように申しましたが、人が人を騙したり、裏切ったり、自分のことを棚に上げて他者のことを注意する、ということはよくあることでしょう。

時代は古くなりますが、武田信玄や織田信長も負けた戦いの中から教訓を得て、次の勝利をつかむきっかけを作りました。正しく誤ちを分析するのには、明治の誤謬を正しく認識する、ということは非常に大切であり、そのためにも西洋霸道や弱肉強食だけでは解決されない「真理」のようなものを会得する必要はあるのでしょう。

『大東亜論』、未完になってしまったのは非常に残念ですが、それでも星の数ほど正義があるという前に、「王道」という正義があることを世に知らしめるきっかけになって欲しいと願います。