M.O のコメント

テーマとしては数号前の『ライジング』の内容に関するものなので恐縮ですが、つい先日知り得たことについて書かせていただきます。
「太陽の塔」の内部についてです。
関西ローカルの『ビーバップハイヒール』という情報バラエティ番組で、「太陽の塔」を取り上げていて、岡本太郎が「人類の進歩と調和」というテーマに反発していたこと、丹下健三がデザインした大屋根に敢えて風穴を開けたことが解説されていました。
その後、昨年から一般公開された「太陽の塔」の内部の紹介に移り、生物の進化が表現された「生命の樹」がどういうものであるか知った時、私は言葉を失いました。

「生命の樹」は吹き抜けでそびえ立ち、古代の原始的な生物から哺乳類に到る様々な生物の進化の過程が、下から上へと表現されているのですが、その頂点は何とクロマニョン人で終わっているのです!
現代の生活を営んでいる我々の姿ではなく、そして古代のホモサピエンスでもなく!

岡本太郎の感覚は我々凡人では解釈できませんが、恐らくクロマニョン人以降は人類は進化も進歩もしていない、というメッセージなのではないでしょうか。
「人類の進歩と調和」に対する強烈なアンチテーゼです。
岡本太郎はアヴァンギャルドでヘンな芸術家、というイメージを以前は抱いていましたが、それはすっかり変わってしまいました。
若輩者がおののくばかりの「保守」でした。
「保守」だからこそ、「うつつを抜かす今のお前ら」に刃を突きつけられる存在だったわけです。
「保守」と「現代アート」は必ずしも矛盾しない!
ひょっとしたら、岡本太郎作品と『おぼっちゃまくん』の間には、意外な親和性があるのでは!?

また、番組では驚くべきエピソードが紹介されていました。
当初、「太陽の塔」は万博終了後に取り壊される予定でした。
ほとんどのパビリオンが灰燼に帰したのと同様に。
保存して欲しいという声は多数寄せられましたが、保存を念頭に置いた設計になっていませんでした。
そのため、仮に保存するにしても耐用年数が問題となったわけですが――
何と、建築業者が「これは保存すべきもの」と自己判断して、永続的に残るような施工を施していたのだそうです。
今時の「事業主トップダウン」では有り得ない話。
この時代は、「個」が自分なりの思いや信条を仕事に反映させられる許容範囲が、まだまだ広かったのだなと感じます。
その上で、常識的かつ本能的に、「太陽の塔」は後世に残すべき偉大な作品と判断した建築業者は、大いに称賛すべきだと思います。
それに比べて現代の我々は――やはり堕落していますね。

No.62 71ヶ月前

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