shiro のコメント

そんな彼を見かねて、永遠の生を持つ「不思議な少年」が舞い降りる。彼は鉄男の歌を「世界中あまたひしめく歌手たちがどんなに努力して鍛えぬいても届かない声」と評します。そして、彼をオペラの大ホールへといざなう。人生で浴びたことのない喝采に包まれる中、しかし鉄男はその幻から覚めることを望みます。彼は幻の聴衆よりも、連れていた犬に歌を聞かせることを選んだのでした。「結局、大事なのは僕が誰に向かって歌ったら気持ちいいかってことじゃけん」。

吐血し、絶命する鉄男。滂沱し、耐えるような表情でその場を立ち去る「不思議な少年」。理不尽と不遇のうちに鉄男は生を終えましたが、かれの幸福はかれの内にあったのでしょう。宿命は変えられませんが、その中でどのように生きるかは、当人次第なのでしょうね。

No.39 78ヶ月前

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