リボンの騎士 のコメント

【新・堕落論】は発売されて程なくして入手し、さっそく一度読み、その後何度か読んでいるのですが、なかなか感想を書けずにいました。
まず目次を見て「変わっているなぁ」と思ってしまいました。第一章から最終章まで、「太宰治のトカトントン」とか「日本はいつも八つ墓村」とか「“平定”こそが“平和”である」とか「弱者のルサンチマンゆえに」など、それら章のテーマがそれぞれにどう関係し、そして繋がるのか、何の予備知識もないと何について書かれてある本なのか、目次を見ただけではなかなか想像できないのではないかと思ったからです。
でも読み進めていくと、なかなか想像できなかったそれらの関連性について、一章ごとのテーマすべてが見事に繋がっていることがわかってくる。それぞれに通底しているものこそが堕落であり、ページをめくるたびにその実感ははっきり明確になっていくわけですが、それはとても厳しく、恐いことでもあったのだけれど、カタルシスさえ感じました。そして程なくして気づくのです。「ゴー宣は、そもそもが堕落論なのではないか」と。
どこの図書館にも置いてあるような古今東西の古典文学には、さまざまな形で「人間は愚かな生きものだ」ということが書かれてあります(たいして読んでいないので、我ながらエラそうですが)。社会を見つめ、それを論じることは、人間を考え、知ろうとしなければできないことだろうと思います。だからこの度の【新・堕落論】とされたゴー宣スペシャルは、文学や哲学の視点を意識的に交え、それらと極めて自然に融合されたのではないでしょうか。

一読者として勝手にも、とくにお気に入りの章を挙げさせていただけば、文学に関する章の「太宰治のトカトントン」「坂口安吾の“堕落論”」「夏目漱石の“こころ”」と、映画に関する章の「“マイノリティ・リポート”と共謀罪」「オーディエンスかロボット天皇」でした。今日はその中の第15章「夏目漱石の“こころ”」について、【新・堕落論】には関係ない内容になってしまうかもしれないのですが、少しだけ書かせていただこうと思います。

No.141 81ヶ月前

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