希蝶 のコメント

 先日述べられなかった、「世界の果ての十七歳」について。銃後の生活を描いた名作だと思ふので。
 その戦争は、小さな、見知らぬ国で起こったもので、すぐに終はると誰もが思ってゐたものでしたが、戦火が拡大し、気づくと三年が経過してゐて、誰の、何のための戦ひといへなくなってゐました。ヒロインの父親は、戦争の取材に出かけると言って、そのままかへらぬ人になり、親戚の家で厄介になってしましたが、生活費を養家に提供するため、からだをうって暮らしてゐました。その情況を、主人公の十八歳の少年は知ってはゐたのですが、誰もが默認してゐる状態で(養家のはうも生活が苦しいので)、さらに、彼女と寝た少年たちも、召集令状で戦場へとかり出されてゆく日常で(18歳から45歳までの健康な男子には、令状がおくられてきてゐる)、中には麻薬をつくって金儲けをしてゐるものもしたりして(戦場での恐怖を忘れさせるため)、そんな世界だったりするのです。
 そして、令状が送りつけられた主人公が最後に、ヒロインに頼んだことといふのが・・・小林先生が書いてゐることなのです。「ぼくの片足をナナリにあげる。このクワで思いっきり僕の足をなぐりつけて。いっそ切り落としてくれてかまわない」。
 ほんたうに、ウーマンなんちゃらによませてあげたい作品です。それとも、この作などを踏まへて、ウーマンラッシュとかいふかたは、発言をしてゐるのでせうか?
 たとへは違ふかもしれないけれども、「塞翁が馬」を思ひだしました。

 かなり長くなりましたが、生と死の葛藤はこの位のものだらうといふ例としてあげてみました。話はずれますが、この作者の河合二葉さんといふかたは十八禁とは思へないやうな文学的な作品を描かれるかたで、上記の作でも、このヒロインのナナリと、主人公のイオは寝てゐません。単行本になってゐないけれども(といふか、コミックスにほとんどなってゐない)、「鰯の鱗」といふ作品でも、主人公の少年と異母妹のエッチシーンを描いてゐないし、デヴュー作が、若年症の健忘症にかかった少年と少女の出会ひと別れを描いたものだったり、なぜこのやうな寶石のやうな作品群が、十八禁といふ理由だけで一般に膾炙しないのか、と思ってゐます。公的な場に書く話題ではないのかも知れませんが、やはり紹介しておきたいので、あげてみました(といふか、このコメント欄をよんでる人の中にも、ご存じのかたはいらっしゃるとおもふのですが)
 
 あまりうまくまとまらなかったですが、こんな感じでよろしいのでせうか。上記の作品にしても、自分の感想にしても若造が偉そうなことを言ってゐるといふ程度のものかも知れないです。 

No.206 83ヶ月前

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