配信お疲れ様です。紅茶の美味しい季節になりました。 角田光代の短編に「共有過去」というお話があります。万引き癖を持つ女とその彼氏の話です。20歳から付き合い始め、もう10年。彼女がいたからこそ、彼の冴えない毎日はなにもかもが楽しかった。しかし、未だに万引き癖が抜けない彼女と同棲する彼は、いい加減嫌気が差してしまいます。同棲するアパート。素晴らしくいい天気の日、彼女が作る朝餉の良い匂いが立ち込める。しかし、食卓を彩るそれらは、全て盗品なのでした。彼はふいに鳥肌が立ってくる。 「もう、君が万引きするところを見たくない」彼ははっきりと告げます。 さて、彼女はこう返しました。なれそめである伊豆の出来事を語り、 「どんなつまんないもの万引きしてもすごい褒めてくれてさ。あたしあんなこと 人に言われたことなかったから、うれしかったな」 彼女は「あたしのことを認めてくれる人に軽蔑されたくない」と他の男と別れ、冴えない彼と一緒になったことを告白したのでした。 認められるべきでないのに認められてしまう。それが悲喜劇を生むのでしょう。
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小林よしのりチャンネル
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配信お疲れ様です。紅茶の美味しい季節になりました。
角田光代の短編に「共有過去」というお話があります。万引き癖を持つ女とその彼氏の話です。20歳から付き合い始め、もう10年。彼女がいたからこそ、彼の冴えない毎日はなにもかもが楽しかった。しかし、未だに万引き癖が抜けない彼女と同棲する彼は、いい加減嫌気が差してしまいます。同棲するアパート。素晴らしくいい天気の日、彼女が作る朝餉の良い匂いが立ち込める。しかし、食卓を彩るそれらは、全て盗品なのでした。彼はふいに鳥肌が立ってくる。
「もう、君が万引きするところを見たくない」彼ははっきりと告げます。
さて、彼女はこう返しました。なれそめである伊豆の出来事を語り、
「どんなつまんないもの万引きしてもすごい褒めてくれてさ。あたしあんなこと
人に言われたことなかったから、うれしかったな」
彼女は「あたしのことを認めてくれる人に軽蔑されたくない」と他の男と別れ、冴えない彼と一緒になったことを告白したのでした。
認められるべきでないのに認められてしまう。それが悲喜劇を生むのでしょう。