shinkimu のコメント


こんにちは。

私も朝生の感想を書かせていただきます。
また、ここの流れにまったく反対するようなことを書きます。
「よそで書いてくれ」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、
ほとんど同一方向の意見だけがズラリと並ぶというのも、このように解放されたコメント欄では必ずしも良いこととは思いません。
ゴー宣道場は「運動の場」ではないのですよね?
異論・ 反論もあっていいのではないかと思いました。
マナーは守ってできるだけ簡潔に書きます。

皆さん竹田恒泰氏が異常だったと人格攻撃をされていますが、私は特にそうは思いませんでした。
竹田氏は従前からおっしゃっていることを今回も一貫して主張していたに過ぎません。
ごくごくフェアに見て、このコメント欄や、道場のブログに並ぶ竹田さんへの個人攻撃はいくらなんでもひどすぎるのではないでしょうか?
ほとんど誹謗中傷に近いものも多いです。
(お断りしておきますが、私はけっして竹田信者ではありません。
ただし、立場としては男系維持派の立場になります。)

もし、男系派の考えに相容れないと思うなら、まず、相手の言ったことに対しきちんと耳を傾け、佐藤優さん風にいえば、その「内在的論理」を正確に理解して、その上で反論するということが肝要かと思います。
相手をレッテル貼りして人格攻撃によって貶めようというのは、フェアなやり方ではありませんし、そのようなやり方では、国民の広範な共感を得られることにはならないと思います。

それでは、いわゆる「男系派」のよって立つ「内在的論理」とは何か。
それは「男尊女卑思想」などではなくて、一にも二にも「皇統が二千年、百二十五代にわたり、一貫して男系によって続いてきた」という事実(ないしは状況認識)に他ならないと思います。
保守思想とはその名の通り、「伝統を保守する」ということを第一義にする思想です。(そう私は理解しています。)
朝生の中で、小林節さんがいみじくも仰っていましたが、「もし女系に移行したら、二千年の伝統は途絶え、今までとは全く違う新しい王朝になる」ということです。
(私もこの説には一定の説得力があると感じています。)
いわゆる男系派はこのように考え、このことを何より恐れているのですが、
「女系で何がいけない?」とおっしゃっている方の中には、どうもこの事実にピンと来ていない方が多い気がします。

朝生の中で、小林節氏が前述の指摘をした時に、隣に座っていた小林先生は、節氏に何やらしきりに話しかけていました。
それはあくまでも「個人的に」お話されていたようですが、マイクが一瞬拾った音声からは「草壁皇子」という言葉が聞き取れました。

おそらく、ここで小林先生は「二千年、百二十五代の男系継承」というものは「まぼろし」で、二代の女系継承がすでに行われている。
という「新天皇論」でも述べられていたことをあらためて小林節さんにお話していたのだろうと推察します。

私はちょっと首を傾げたのですが、小林先生はなぜ、こんな大事な話を、小林節さんにだけ「個人的に」お話されたのでしょうか?
朝生の議論の中で、なぜ「堂々と」この話をされなかったのでしょうか。
そのことを議論の俎上にのせ、きちんと証明することができれば、相手を完全に論破することができます。
なぜなら、これこそがこの問題の核心だからです。
この「女系継承の正当性」さえきちんと証明できれば、竹田氏のお話に対して、イライラして苦虫を噛み潰したような顔をする必要もないのです。

平成二十三年に上梓された谷田川惣さんの「皇統は万世一系である」という著作は、小林先生が「新天皇論」中で著されていたこの「双系」理論に対するかなり重大で決定的な反論になっています。
小林先生はもちろんこの本はお読みになっていると思いますが、これに対する反論がこれまでに小林先生のお口からは一度も出たことがありません。
これはなぜでしょうか。

小林先生は最近ブログ等で、「よって立つのは血脈ではなく今上陛下の人徳である」とおっしゃるようになりました。
これには正直驚きました。
「天皇論」でも、「新天皇論」でもけっしてこのようにはおっしゃってなかったと思います。
今上陛下が類稀なる人格者であることは誰もが認めるところです。
しかし、天皇陛下が天皇陛下である所以は何か。
朝生で竹田恒泰さんがいみじくも仰っていたように、それは能力とか人間性によるものではありません。
それは血脈によるものに他ならないということ。
そのことは否定しようにもない厳然たる事実です。

この「皇統とは血脈である」というお話を竹田恒泰さんがされた時、スタジオの方々からは唖然とするようなため息が漏れました。
「何て気持ちの悪いことを言う人なんだろう?」というため息にも聞こえました。
ここに男系派と女系容認派の齟齬の大きさが表れていると思いました。
こんな当たり前すぎる当たり前のことすらまったく共有されていないのです。
これは男系維持をを守るために「旧宮家から養子を取ればいい」というお話を竹田さんが仰った時も同じでした。
確かに現代人の感覚からすれば、恐ろしい人権無視の感覚だと取られる向きもあるかと思います。

AEIのサイトでマイケル・オースリンという米国のジャーナリストは、
「天皇制は世界にも類を見ない奇妙なシステムであり、それは前近代と超近代の混在する日本を象徴するものである。」
と仰っていたそうです。
まさに天皇制というのは「前近代と超近代を象徴するシステム」であり、それは西欧をモデルにした近代社会がもつ人権感覚とはそもそも相いれないものだと感じます。
朝生の最後で、小林先生は「これでは日本の皇室はボコ・ハラムだと海外から思われてしまう」
と仰いましたが、完全な「世襲制である」ということ一つとっても、好むと好まざるとに関わらず、そのような面を持ってしまうのは仕方のないことです。

昭和天皇と今上陛下はそこを修正すべく様々な改革を行ってきました。側室を廃止し、皇后を民間から選び、ご子息を自らお育てになり、お膝をついて国民に語りかけたりなさるようになりました。
これらはご承知のように、前例のないことであります。
また、これらのことは国民に寄り添う昭和天皇と今上陛下の素晴らしさを表す例としてしばしば取り上げられます。

しかし過去二千年にわたって続いてきたこの国体を、今後さらに幾千年にわたり、朝生の中で三浦瑠璃さんの仰った言葉を借りるなら「揺るぎなく」続けていくためにどうすればいいかという観点に立てば、
私は戦後昭和天皇と今上陛下のなされた様々な皇室改革に(貴いことであるということは重々承知しつつも)諸手を上げて賛成することはできません。

「前近代と、超近代の混在する世界にも類を見ないシステム」を守り通すためには、「近代化」のための改革は皇室そのものの衰退を招く方策になってしまうのではないでしょうか。
現在皇統を断絶させる危機の端緒になっているのは、まさに、その「近代社会との整合性を整えるために」戦後行われてきた皇室改革に原因の一端はあると、私は思います。
こんなことを言えばまた「なんという逆賊だ」とお叱りを受けるでしょうし、あまりにも畏れ多くて誰も口には出さないことですが、これは事実として認めなければならないことだと思います。
皇室が臣民に寄り添えば寄り添おうとするほど皇室そのものの衰退を招いてしまう。
そういうパラドックスは常に存在するものだと思います。

私は、左翼の方々が、「こんな人権無視された界域で生きなければならない皇室の方々はお可愛そうだ」
「だから皇室など解体して、共和制にすればいい」
と、もし仰るならば、その理屈はスジが通っていると思います。
まったく賛成はできないですし、徹底的に抵抗しますが、少なくても話に嘘やごまかしはない。

私がもっとも恐ろしいと思うのは、さも尊皇の徒のようなふりをして、天皇陛下に対する敬愛の念を繰り返し述べながら、
その実はこの左翼とまったく同じ考えで、「天皇陛下がお可愛そうだ」だから「皇室など解体すればいい」と実のところ思っているのではないか?
と疑われる人たちです。
意識しているのか無意識なのかは別として、進歩史観に立脚されて皇統を語る方々はその陥穽に陥ってないかどうかご自身で確認してみる必要があると思います。
こういう歴史に対する「畏れ」を知らない人たちが、今、「天皇陛下の勅命」を錦の御旗にして声をあげ、皇統断絶の危機を招いている。
ここ何週間かで私が非常に感じたことはそういうことです。

承詔必勤に関しましては、私はアエラの2006年7月31日号における「富田メモ」に関するインタビューで、他ならぬ小林よしのりさんがおっしゃっていたことをここにお書きすれば済むことだと思っています。

「陛下がこう言っておられるからその御心にひれ伏せ、ではまるで戦前回帰で一番危険な思想。わしは天皇制は支持するけど、天皇を個人崇拝はせん」

この度は天皇陛下から我々臣民は非常に大きな宿題が与えられたと思っています。
陛下から投げられたボールを我々はどう受け止めればいいか?
それはただ、ひたすらひれ伏して陛下のご意思を承れということではありませんし、ましてや反対意見の者を逆賊呼ばわりして誹謗中傷すればいいということにはなりません。
そのようなことは。天皇陛下ご自身が決してお望みにならないことだと思っています。

朝生で、竹田恒泰さんが仰っていたように、日本国憲法の第1条にはこう記されています。
「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」
どんな意見を言うのも自由だと思いますが、あくまでも天皇の地位は日本国民の総意に基かなければならないものです。
国民どうしを分断するような言を弄して、のちのち遺恨を招くようなことにならないように、議論をするにあたって我々はくれぐれも留意しなければならないと思っています。

No.95 101ヶ月前

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