田中康夫公式ブロマガ「だから言わんこっちゃない!」

「だから、言わんこっちゃない!」2月17日号

2013/02/17 22:24 投稿

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普段、「新聞」には殆ど接しないのですが(苦笑)、奇しくも隕石がロシアに落下した2月15日付「日本経済新聞」夕刊1面を見た瞬間、これは偶然にして抜群のタイミングで掲載された記事として、後世、語り継がれるであろう、と思いました。無論、些かの皮肉を込めて、ですが。

「アジア 原発新設100基 日韓ロ、受注競争が過熱 20年で50兆円市場」2013/2/15 14:01
アジアで原子力発電所の建設が急増し、今後20年間に約100基増える見通しだ。中心は中国、インド、韓国で新設計画の9割を占める。経済発展に伴う電力需要増に対応するためだ。日本企業にとっては原発関連の輸出機会が広がる。同様にアジアへの原発輸出を目指す韓国やロシアなどと官民を挙げた受注競争が加速しそうだ。

 各国のエネルギー計画などをもとに日本経済新聞が集計した。中国は2020年までに56基を新設し、発電能力を8000万キロワットと現在の9倍に増やす。総発電量に占める原発の割合を現在の約1%から10%まで高める。インドは18基を造り、原発の発電能力を50年には4700万キロワットと現在の11倍強にする。韓国は19基を新設し、30年までに原発比率を約3割から59%に高める。ベトナムは30年までに合計14基を新設する計画だ。

 日本は福島の原発事故を経て原発政策を見直しているが、アジアでは原発新設の姿勢が際立つ。和光大の岩間剛一教授は「電力需要の増加、温暖化ガスの削減、再生可能エネルギーの能力不足」の3点を理由に挙げる。

 経済協力開発機構(OECD)によると、世界の発電量は35年に30兆キロワット時を超え、08年より8割も増える。その大半はアジアを中心とする新興国だ。太陽光や風力など再生エネは発電コストが高く、今の技術では安定した発電を見込めない。岩間氏は「少ない燃料で大規模発電ができる原発は新興国にとって魅力的だ」と指摘する。

 原発1基の新設費は5000億円程度で、100基だとアジアは50兆円規模の市場となる。欧州企業と組み世界市場で先行する東芝や三菱重工業などの日本の原発メーカーは輸出機会が広がる。

 韓国やロシアも技術開発に力を入れ、原発輸出を積極化している。ベトナムではロシアと日本、フランスなどによる受注競争の結果、第1期(2基)をロシア、第2期(2基)を日本が受注。第3期は韓国が受注を目指し首脳会談などで攻勢をかけている。

 安倍晋三首相は1月、ベトナム、タイ、インドネシアを訪ね原発などインフラ輸出を促す考えを示した。外務省は原発輸出を視野にインドと原子力協定の締結に向け交渉を続けている。経済産業省はサウジアラビアと原発輸出の協議を始めた。

 新興国とは対照的に欧米では原発新設の動きは目立たない。米国は昨年、34年ぶりに新設計画を承認したが、シェールガスなど安価な天然ガスの増産を見込めることもあり原発は基本的に現状維持の方針。送電網で電力の域内融通が利く欧州は再生エネに軸足を移しており、ドイツは22年末までに原発を順次閉鎖する。原発推進国の仏も75%の原発比率を25年までに50%に下げる方針だ。

 各国の原発政策に温度差が出るのは国内の資源の有無など様々な要因が絡む。アジアなどでの原発新設を踏まえ、国際原子力機関(IAEA)は「世界的に原発の安全性を高めることが不可欠だ」としている。


う~む、「新興国とは対照的に欧米では原発新設の動きは目立たない」という一文は、自国では禁煙化を進める一方で、アジア、アフリカ、中近東ではタバコを売りまくる二枚舌商法と同じ「先進国」の身勝手さを露呈していて、その意味に於いては座布団進呈。

と同時に、いやぁ、驚きましたデスね。
「日本は福島の原発事故を経て原発政策を見直しているが、アジアでは原発新設の姿勢が際立つ」との前振りに続いて、
「『電力需要の増加、温暖化ガスの削減、再生可能エネルギーの能力不足』の3点を理由に挙げ」、「少ない燃料で大規模発電ができる原発は新興国にとって魅力的だ」と指摘している学者が、ニャンと和光大学の教授なのですから。

だって、「知的冒険大学」なる惹句がHPに踊る和光大学は、
全共闘活動家で水俣病問題にも取り組み、東京大学で助手に27年間留め置かれて定年を迎えた最上悟氏を人間関係学部長として登用し、マルクス主義的史観の歴史学者で知られる永原慶二氏も一橋大学から迎え入れた学園として知られているのですよ。
まあ、同じく名誉教授の岸田秀氏は「新しい歴史教科書をつくる会」の賛同者でしたから、「価値紊乱」wなのが和光大学の“身上=取り柄”なのかも知れませんが、以下の経歴も知ると隔世の感。

和光大学教授の岩間剛一氏は、1981年に東京大学法学部を卒業。東京銀行=三菱東京UFJ銀行に入行後は、本店営業第2部の部長代理として経済産業省を担当し、石油公団=石油天然ガス・金属鉱物資源機構への出向歴も有するのです。
「これからの人類は生活の豊かさと地球環境保護をどのように両立させるかという難しい問題に直面している」
と和光大学生にゼミナール勧誘文の中で「原子力発電」の意義を語り掛ける岩間氏は、地球環境保護改め地球環境破壊、地球環境破滅へ導くリスクの多寡は、経済学者として考慮に値しない、と考えているのかも。
家内のW嬢が仲良しな伊藤理佐嬢の夫君の吉田戦車氏も和光大学出身者として、ちょっちビックリしているのでは(苦笑)。

紙面では、「アジアで建設・計画している原発」と題して地図の上に「日本2基・韓国19基・台湾2基・ベトナム14基・中国56基・インドネシア4基・インド18基」と記されていて、「日本の2基はJパワー大間、中国電力島根3号機」と説明も加えられています。
無論、建設稼働後に生じるであろう「大間のマグロ」価格急落に伴う「経済効果=経済損失」には言及されていません(苦笑)。


フィリピンには御存知、一度も稼働せずに現在は観光資源として訪問者が相次ぐ「バターン原子力発電所」が存在します。
「中央制御室、フィリピンの原発観光」と題する「ナショナルジオグラフィック」
の極度に簡潔wな説明に加えて、
「中国新聞」の「稼働せず廃止、売却先も未定」
を読んだ上で、
僕の畏友で写真家の木下健氏がフェイスブックに寄稿した文章を再録しましょう。

(リンクはFaceBookの公開記事ページ)

1990年に、NGOの撮影で、フィリピンのバターン半島のモロンを訪れました。
NGOの修道会のスタッフがまず案内してくれたのは、やはり『バターン半島死の行進』の碑でした。
その行程の途中の山あいの展望の利く場所で見せてくれたのが、半島に突き出た所のコンクリートの建物でした(写真)。
それは、時のマルコス政権が1984年に23億ドルを費やし完成した『バターン原発』でした。そして、その原発は1986年にアキノ政権 が、活断層や活火山が有り安全性の問題で核燃料を入れる前に稼働の許可を出しませんでした。
 
稼働がストップになった背景には、住民の反対運動が大きかったそうです。マルコス政権は武力で弾圧しようとしました。住民のリーダー「エルネスト・ナザレノ」が凶弾に倒れるなど悲惨なものだったようです。
それでも住民達は闘いを止めることは無く、アキノ政権誕生の原動力となりました。公約通り、アキノ大統領は『バターン原発』に営業許可を出しませんでした。
 
『バターン原発』の建設の過程を調べてみると、アメリカが日本に原発攻勢をかけたのと同じです。
賄賂は当然のマルコス大統領とウェスティングハウス社の癒着は、日本と同じ構図です。最初の予定の5億円ドルの建設費は完成時には23億ドルに膨らんでいました。燃料棒は入れる前にドイツに売ったようです。
23億ドルの建設費の中には、円借款も含まれているようで、日本の銀行にも借金を返しているようです。
 
アキノ大統領の息子が、新大統領になり、正式に稼働にストップが決定されました。そして、観光省が『バターン原発』を観光名所にしようという案を持ち出しました。2011年の311の福島第一の事故が後押しをしました。
 
世界で唯一の「原子炉の中に入れる」原発見学です。ここも、海の側ですから、ビーチをリゾートとして使えるようにもしました。1度も使用していないので海水の汚染は有りません。
オリエンテーションと原発内部の見学で約1時間。見学料金は、ビーチの使用料含めて、150ペソ(約350円)。 
 
2月6日に、NGOの支援をしているボトランから、車をチャーターして行ってきました。長い間の友人ロウェナの弟がバターンにいるので、その弟に会うために家族も一緒に同行しました。
 
半島の峠道を越えて、『バターン原発』に着くと、スタッフが「2日前の予約が必要」と言い出しました。ここまで来て、外だけ見て帰るわけには行きませんので、「日本から来たのだから」としつこく頼んで、見学できることになりました。
まず、パワーポイントでのオリエンテーション、「福島第一程度の地震には耐えられる」ような設計だそうです。オリエンテーションが終わった頃、やはり予約無しのドイツ人が来ました。当然、いっしょに見学です。予定が無かったので、原発の中の電力を動かすのに時間がかかり少し待たされました。 
 
『バターン原発』は福島と違って『加圧水型』なので、蒸気を海水で冷やすための巨大なパイプ(写真)がたくさん有ります。
格納容器の中には厳重な2重の扉を通って入りました。正面に原子炉本体(写真)が見えますが、移動用のクレーンが邪魔して見にくかったです。手前には制御棒(写真)がありました。 
中央制御室(写真)にも入れますが、電気は通じていて厳重な管理がされています。中央にある電話が古いそのままの物で、いっしょに行ったドイツ人と「これが大統領と直結している電話か」と顔を見合わせました。
最後は、タービンと発電機(写真)。すべて、ウェスティングハウス社製。外に出て、見学者全ては、スタッフによって記念撮影(写真)され、ホームページに掲載されるそうです。
 
炎天下の中の見学でした。
 
最後に、フィリピン観光省の『バターン原発』見学者へのコメントを掲載します。
 
 
『訪れた人は原発の理解を深め、使い方次第では人々の生命を脅かす存在になり得るということを胸に刻む』
 
『対応を誤れば、世界の核エネルギーが、いかに恐ろし形で生活を脅かすかを見てもらいたい』
 
『バターン原発は、スリーマイル島、チェルノブイリ、福島の人々を襲った惨事について、国際社会に警鐘を鳴らす存在になるだろう』 
 
今度は、日本がフィリピンから学ぶ番です。
う~む、最後のフィリピン観光省の文章こそ弁証法ですね。
旧科学技術庁官僚が現在も跳梁跋扈する文部科学省は、「フクイチ」を世界遺産申請して、これを凌駕するだけの哲学と理念を醸し出す文章を書けますかねぇ。無理に決まってますけど(涙)。

ところで、大量の冷却水を必要とする原発が、海岸から7kmも離れたヨルダン内陸の砂漠の真ん中に建設される、猿でも判る「安全性=危険性」を理解しない原発マンセー族は、以下の記事を読んでもマイペンライ=ไม่เป็นไร
なのかな。

この国と原発:第6部・輸出の最前線で今/中 「エネルギー不安一掃」ヨルダン建設計画
毎日新聞 2012年07月12日

記者の目:トルコなどへの原発輸出=花岡洋二
毎日新聞 2012年09月13日

ヨルダン議会、原発事業一時停止を議決 安全性など懸念
朝日新聞2012年5月31日

ヨルダン、原発発注先候補に三菱重・仏アレバ連合とロシア社を選定
ロイター2012年 04月 30日


「ヨルダン、初の原発計画」
朝日新聞Globe2010年8月2日

何れも無料で全文閲覧可能なのでURLのみ記しましたが、う~む、「日本の原発を中東で売る 激しい争奪戦、戦略は」と題して「3・11」前に「Globe」に掲載した記事は、「朝日新聞」としては忸怩たる思いかな。

はてさて、今や全世界で先刻御承知のURLとは言え、
今回の隕石落下映像を最も豊富にアップしている「Russia Today」
は国営放送局だったのね。

今回の隕石に関するウラジミール・プーチン政権の認識に関して、オヨヨ、と思ったのは以下の記事ですね。

(リンクは朝日新聞デジタル・全文閲覧には会員登録が必要(無料))

【モスクワ=関根和弘】1200人の負傷者が出たロシア・ウラル地方の隕石(いんせき)爆発で、プーチン政権が災害対応を急いでいる。プーチン大統領自身が15日、プチコフ緊急事態相らを招集し、「冬でもあり、ことは緊急を要する」として、復旧活動や被災者の支援を指示した。
 緊急事態相は、大きな被害が出たチェリャビンスク州に部隊を増派。16日には輸送機を派遣して、背骨が折れた女性をモスクワの医療機関に運んだ。
 チェリャビンスク州や周辺地域には、使用済み核燃料の再処理施設や原発がある。過去には、兵器用プルトニウムの製造施設で、放射性廃棄物の保管場所が爆発し、大量の被曝(ひばく)者を出す惨事も起きた。隕石の墜落に対して、「危うく第2のチェルノブイリになるところだった」とする報道もあった。
 プーチン氏は「(隕石を)監視する効果的な仕組みは今のところない。天文学的な観点からだけでなく、国民への事前警報の問題も考えなければならない」と表明した。宇宙開発・国防・原子力の各部門を担当するロゴジン副首相が、今回の爆発を踏まえた隕石の監視態勢を近日中にまとめるという。

「『冬でもあり、ことは緊急を要する』として、復旧活動や被災者の支援を指示」ってのは旧共産圏に限らず、実体を伴ったパーフォーマンスとしての指導者の発言ですが、注目したのは、
「(隕石を)監視する効果的な仕組みは今のところない。天文学的な観点からだけでなく、国民への事前警報の問題も考えなければならない」
って発言ですね。
「科学を信じて・技術を疑わず」ではなく、「科学を用いて・技術を超える」のすら困難だと認めているのですから。
とは言え、日本同様にロシアも、原発輸出が国家プロジェクトなのですから、う~む、考える葦たる人間ったのは不可解な動物ですね。


最後に、エアバス社が「脱リチウムイオン電池」というお話。

(リンクは時事.com)

【パリ時事】欧州航空機大手エアバスは15日までに、開発中の最新鋭中型機A350にリチウムイオン電池を搭載しないことを決めた。エアバス関係者の話として、AFP通信などが報じた。リチウム電池を搭載したボーイングの最新鋭機787のバッテリー発火事故を受けた措置。
 エアバス関係者はAFP通信に対し、A350の引き渡し1号機は「リチウム電池ではなくニッケルカドミウム電池を搭載する」と述べた。ただ、第1回飛行試験はリチウム電池を用いた機体で行うという。

ニッケル水素充電池でなく、ニッケルカドミウム蓄電池ですけどね。
カドミウム公害のイタイイタイ病が発生した日本としては、ちょっち複雑な心境。

次回の無料生放送「あとは自分で考えなさい。」~EX~第10回は20日(水)16時~。

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