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山田玲司のヤングサンデー 第226号 2019/2/18

「何もできなくてもバンドを組む」という作戦

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人間には2つの種類がある。

「バンドを組んだ事のある人間」と「バンドを組んだ事のない人間」だ。


そもそも「バンドを組む」という発想が自分の中にない人もいるけど、一度くらい「バンドやりたい」と思った事があると思う。


学生時代に浮かれた連中が「俺達でバンド組もうぜ」なんて言い出すと「じゃあ私はタンバリンで」なんて言う人も必ずいた。


楽器はできなくてもバンドはやりたい。

80年代にもそんな人は多かった。


そんな時、世の中に「打ち込みマシン」とかの「自作カラオケ制作ツール」とかが販売された。

そのタイミングで、カラオケでも、レコードでもいいから流して、そこに自作の歌やら詩やら「叫び」なんかをのっけて、面白ければよし、というジャンルが現れた。


雑な言い方だけど、「ニューウェーブ」というジャンルの音楽には「そういうのアリ」という雰囲気があった。


パンクも演奏はシンプルでいいし、ヒップホップも「楽器演奏能力」は問われなかった。


今回の番組で取り上げた「ナゴムの時代」は、そういうカルチャーが生まれた時代だった。


問われたのは「アイデア」と「センス」「思想」と「度胸」だった。


「それなら行ける!」と暴れ始めたのが「スチャダラパー」や「電気グルーヴ」などの新勢力だった。

もちろん当時も「凄腕のバンド」は沢山いて、その中にも素晴らしい作品はあったのだけど、上手ければ良いわけではなかった。


僕は「その感じ」が最高に好きだった。


そもそも僕が「漫画」という手法に人生を賭けたのは、それが「自由」で「上手い下手より独創性が大事」という場所だったからなのだ。



それはともかく。

バンドから「演奏技術のハードル」を外すと「誰でもできること」になる。

もちろん「度胸」やら「アイデア」は必要だけど、楽譜は読めなくてもいいし、専門教育も受けなくていい。


そんなわけで、「面白い人」が次々とバンドを組んで出てきたのが、あの時代だったのだ。