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山田玲司のヤングサンデー 第148号 2017/8/14

「初音ミクの悲しみ」とは?

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階段を上がるとそこには「初音ミク」が待っていた。


そこは「手塚治虫記念館」の2階。

僕とヤンサンの仲間達は手塚治虫記念館に来ていたのです。

しかも我らが手塚るみ子さんがわざわざ来てくれて、中を案内してくれるという超豪華な体験。


大人の修学旅行の気分でおかしいほどはしゃいでいる「おっくん、しみちゃん、久世」の3人をよそに、僕は久しぶりに感じる「手塚治虫の生々しいエネルギー」に圧倒されていた。

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そもそも手塚治虫のやってきた仕事は、種類も量も凄まじく、どんなに大きな会場でも簡単に紹介し切れるようなものではない。

コラムや論文のようなものから、膨大な漫画、アニメ映像、絵本、実験的な絵画まであるのだ。


そんな「神の仕事」と「その人生」の紹介をわかりやすくダイジェストで見せてくれるのが手塚治虫記念館だ。


そんなわけで、僕の様な手塚治虫チルドレンは入館するやいなや円筒形のガラスケースに入った品々に釘付けになってしまって、進もうにも進めなくなる。

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閉館後に入れてもらったので、他のお客さんには迷惑はかからないが、館長を含めスタッフの皆さんの帰宅時間を延ばしてしまってはいないか・・なんて思うのだが、何しろ目の前には伝説の「新宝島」や「ブラックジャックの生原稿」「手塚先生のベレー帽と眼鏡」まであるのだ。


るみ子さんは、はしゃぐ僕らを微笑ましく見ている。彼女は「私はファザコンです」と公言している人なので、「大好きなお父様」の仕事に夢中になっている僕らを見て、悪い気分にはならないと思うものの、僕らがあまりにも先に進まないので、さすがに申し訳なくなってくる。



そんなこんなで、圧倒的な手塚マジックを堪能して、ようやく僕らは階段を上がったのです。



そこで待っていたのが「初音ミク」さんです。

手塚作品と初音ミクのコラボ企画が展開中だったんですね。

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「初音ミク」は若い世代では知らない人はほとんどいない存在で、ボーカロイドという「自分が作った曲を歌ってくれるソフト」の中で最も有名なキャラクターです。


架空の存在で、人間ではない。ロボットという感じではないものの「アトム」とは繋がっている感じがします。



なので、企画展を見ているとどうしても「アトムとの相違点」が気になる。



~アトムと初音ミクの違い~


まず言えるのは、アトムには「内面」があるという部分です。

アトムのルーツはディズニーの「ピノキオ」なので、それは当然です。

「普通の人間になりたい」という思いが、ピノキオにもアトムにも入っているわけです。

なので、アトムは「悩む」のです。この「人間ではないものの悩み」が後の漫画やアニメの大きなテーマの1つになっていきます。

そこには、戦争に負けてしまった国民に生まれた複雑な「差別感情」や、「自分とは何か?」という自己実現、自己発見のテーマも含まれます。


そもそも「人間ではないもの」をテーマにする時に現れるのは「人間とは何か?」という問いなのです。



一方「初音ミク」は、初めからユーザーの為の「ツール(道具)」として登場した存在です。

なので、内面は無く、その「内面の空白」をユーザーの「思い」が満たす、という設定です。


なので、ミクは「私のミク」「俺のミク」という、ボカロを使う人それぞれの「道具」であり「アイドル」になっているのです。




もしもアトムがミクに会ったら彼は戸惑うでしょう。