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山田玲司のヤングサンデー 第124号 2017/2/27
「食えてない人」ばかりの音楽、絵画、漫画、の作り手になるのを勧めるのは罪か?
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「漫画家になって成功する人の割合は信じられない程少ない」
漫画家を目指す2人の若者を描いた「バクマン」は、こんなシーンで始まる。
しかもご丁寧に実際のデータ(みたいなもの)まで並べて、「漫画家になるのは奇跡みたいなものだ」なんて読者にぶつけてくる。
でも物語が始まると、案外すぐに主人公たちはデビュー出来るし、大ヒットを飛ばしている「天才漫画家」は友人になるし、アシスタントからデビューしていく人や、変人のギャグ漫画家や、崖っぷちのベテラン漫画家も含めて、「何とかやれている人達」が次から次へと出てくる。
なので、読者はそれが「とんでもない奇跡」だということを忘れて「僕にも出来るかも」と思って読めるようにできている。少年漫画としては実に正しい「バクマン」だし、実際漫画家になった僕の人生もこんな感じだった。
とはいえ、この漫画の冒頭で出てきた「漫画業界のシビアな現実」は、連載当時より更に「深刻度」を増しています。
なので、いくら漫画家になりたくて頑張っていても、かつてより「報われないこと」が多いわけです。
今週は久々の「Cバージン」で、漫画の描き方を楽しくレクチャーしてたんだけど、心の中でどこか「こんな漫画産業没落の時代に安易に漫画を描くことを勧めていいんだろうか?」なんて思ってもいました。
例えるなら、化石燃料の時代が終わり、自然エネルギーにシフトせざるを得ない時期に差し掛かっているのがわかっていて、まだ「油田を掘ろう」なんて言っている、かつての石油王みたいな感じです。
しかも多くの油田は枯渇していて、かつての様なビッグチャンスなんかないのがわかっているのです。
「僕がやっているのはそんな事と同じ様なものじゃないか?」なんて悩むのも当然の「深刻な漫画業界」です。
それでも、漫画という表現は素晴らしく、先代の開いてくれた「漫画文化」の豊かさは他国にない「財産」です。
自分も含めて、「その火を消してなるものか!」と多くの人が思っているし、「それでも、その世界に飛び込みたいんです!」なんて、リスク承知で挑んでくる人に「今は止めときな」なんて言えるわけがないんです。
なんなら「全力で応援」したいんです。
〜美大、音大、専門学校の罪〜
そんな葛藤を抱えながら、懲りずに「漫画の描き方」なんてのをやっていたんですが、ある「漫画専門学校系」の先生の人が、それと同じような悩みをネットに上げていまして。
そこには「漫画雑誌が次々に消えていく」「単行本も売れない」「かつての漫画好きの漫画から離れようとしている」という現実が書かれていて、「そんな時代に漫画を教える事は正しいのか?」という、漫画を教える側にいる人間の「生々しい苦悩」が書いてあって、とても誠意のある良い記事でした。
その先生は何人かの現場の先生に意見を聞いて、その中の1人が言っているこんな話を支持しています。
それは「美大や音大に行っても、美術や音楽の仕事で食っていける人は少ないけど、それは文学部の人が文学の仕事に着くとは限らないのと同じで、無駄な事ではない。たとえ芸術系の仕事に着けなくても、それらを学んだ事が人生を豊かにする」みたいな話でした。
確かにそうです。そういう側面もあるんです。でも何か納得できない気持ちも残る。
だって本当は「漫画家(送り手)になりたい」と思っているから努力してるんだもんね。
実はこの話、美大・音大なんかに行った人がみんな経験する「モヤモヤ」です。
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