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山田玲司のヤングサンデー 第86号 2016/5/30

蘇る「思い出おじさん」

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ある程度の年齢なになると、人は昔の話ばっかりするようになります。
特に学生時代が黄金期だったような人はその症状がひどいし、何十年も「教室で起きたおもしろ話」なんかを繰り返すわけです。

僕の地元の友人にはこのタイプが沢山いて、会う度に「あん時笑ったよな〜」なんて話になる。
これはこれで楽しいんだけど、楽しかったのが「全部昔のこと」っていうのは情けない。

同級生だけの関係でそうなるのは我慢できるけど、年下相手に「昔のこと」ばかり話しているのはキツい。
何度か聞く分には年下の人も面白いかもしれないけど、会う度に「おれの昔の頃はさ」とか「あの時代はさ」なんて聞かされるのは嫌だろうと思っていました。

そんなことを考えるのには理由があって、過去を生きているなんて「今がつまらない証拠」だと思っていたからです。

なので何年か前から僕は「思い出おじさん」にはなりたくない、と言っていたのです。

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とか言いつつ、長く生きているとどうしても話題は「昔の話」になりがちです。
「今週起きたこと」や「今やろうとしていること」もいいんだけど、80年代には80年代の、90年代には90年代の「面白さ」があるし、その時代の体験や知識から見出だせるので、気がつけば番組で時代分析の「クロニクルおじさん」になっている。

そんな事を「どうなんだろうなあ」と思っていた矢先、ラファエロ前派の特集をしていて思いました。

「こいつらも同じだ」

ラファエロ前派は色々偉そうに「革命」だの「新しい時代」だのと言っているけれど、描いている題材はお馴染みの「シェークスピア」だの「伝統的な物語」だったりします。

これは2次創作でコミケの同人誌みたいなもんだ、と番組では言っていましたけど、彼らがやっていたのは「古典」を自分達の時代の技法やセンスで再現する仕事で、どちらかと言えば「Dr.スランプ」に近い感じです。
「人気漫画」を読者の性的欲求に合わせて再創作するものとは似てるけど少し違う。

80年代のヒップホップカルチャーが「過去の偉人の作品」を引用するはるか前に、「自分が好きな過去の作品(思い出のコンテンツ)をアレンジして表現する人がいたわけです。

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サージェント・ペパーズのジャケットに並ぶ人達は、当時のビートルズのメンバーに影響を与えた「思い出の偉人達」です。
手塚治虫の漫画もベースは戦前のロシアのアニメとディズニーなどで、そのベースの上に「その時流行っているモノ」が乗っています。
ブラックジャックの後に描かれた「プライムローズ」みたいな作品は当時大ヒットしていた「スター・ウォーズ」すぎるので誰でもわかると思うけど、ほとんどの作品がそんな感じの「ミクスチャー」なのです。