戦後70年の締めくくり、今年最後の上映会は五味川純平原作「戦争と人間」第三部完結編を鑑賞します。
第一部から第三部までを上映すると、およそ10時間にも及ぶため、今回は第三部完結編のみを上映します。この第三部完結篇の圧巻は、ノモンハン事件の正確かつ精密な戦闘シーンが描写されていることです。ノモンハン、この聞きなれない言葉をご存知でしょうか。これは高校の日本史教科書では、欄外の説明にほんの一行にも満たない記載があるだけです。1938年の張鼓峰事件と併記され、「1939年ノモンハンにて日ソ両軍の武力衝突があった」とあるだけです。
しかし、このノモンハンは「擬似太平洋戦争」とも言える、日本陸軍が初めて体験した近代戦であったのです。近代科学兵器に対する精神主義が見事に描かれています。未見の方のために詳述はできませんが、「天皇陛下から賜ったこの38式歩兵銃を何と心得ているか」「(弾が)当たらないのは軍人精神が入ってないからだ」「チャンコロ(中国人に対する蔑称)みたいな負け犬根性は許さんぞ」などのセリフがあります。精神力で相手に勝てるのなら何も技術と生産力を軍備にそそぐ必要はありません。
そして、軍人の恐ろしさも垣間見えます。このノモンハン事件は関東軍の独断専行で行われました。東京で陸軍首脳がこのことを議題にした際、当時の陸軍大臣板垣征四郎は一言「一個師団ぐらい、どうだっていいじゃないか。関東軍の好きなようにやらせろ」と言うのです。一個師団と言うのはおよそ2万人の兵員数です。2万人の命を「どうだっていい」ですませるのでしょうか。そのために、この地獄の戦場に送られた兵士は、その家族はどうなるのでしょうか。このノモンハンを映像化した作品は、『戦争と人間』以外にはありません。その意味では大変貴重な映像でもあります。是非、この機会にご覧ください。
◆ 日時:2015年12月23日(水・祝)午後2時~
◆ 場所:横浜平和と労働会館5階 当協会教室
◆ 料金:無料
◆ 参加お申し込み:NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会事務局
E-mail: eurask2@hotmail.co.jp
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神奈川県日本ユーラシア協会機関誌『日本とユーラシア』2015年10月号電子版をご覧下さい。
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