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コロナ後の学校はどうあるべきか|藤川大祐

2020/10/13 07:00 投稿

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  • 遅いインターネット会議
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  • 藤川大祐
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今朝のメルマガは、イベント「遅いインターネット会議」の冒頭60分間の書き起こしをお届けします。
千葉大学教育学部教授の藤川大祐さんをゲストにお迎えした「withコロナの時代に教育はどう変わるのか」の後編です。GIGAスクール構想が進み、1人1台のタブレット導入が進む一方、現場ではICTの導入が進んでいかないという現状がある中で、これからの学校はどうあるべきなのでしょうか。そして組織の問題だけではない、オンライン教育導入の障壁の原因とは何なのでしょうか。(放送日:2020年9月1日)
※本イベントのアーカイブ動画の前半30分はこちらから。後半30分はこちらから。
【本日開催!】
10/13(火)19:30〜宮田裕章「データサイエンスで共創するニューノーマルの世界」
ゲストは、LINEでの「新型コロナ対策のための全国調査」を手がけた宮田裕章さん。
宮田さんが9月に刊行した著書『共鳴する未来』は、ビッグデータで変わりゆく自由、プライバシー、貨幣といった「価値」を問い直し、個人の生き方を原点に共に生きる社会を提言しています。データとはそもそもなにか? 私たちはデータの活用を通じて、どのような新しい社会を築いていくことができるのか?
宮田さんの考える未来のかたちをうかがいます。

生放送のご視聴はこちらから!

遅いインターネット会議 2020.9.1
コロナ後の学校はどうあるべきか|藤川大祐

Afterコロナの学校のあり方とは

藤川 オンライン教育の話に続いて、9月入学の話もしちゃいますが、議論が生まれた経緯はここに書いた通りです。

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 休校が長くなる中で高校生が焦りだして、失われた学校生活を取り戻すために卒業時期を遅らせてほしい、とTwitterでちょっと盛り上がったんです。要は、自分の次の学年から9月始まりにしてくれれば自分たちが休んだ分を取り戻せるじゃないかということですね。それを受けて4月下旬に知事の方々などが「9月入学をやろう」という話をして安倍首相も最初は前向きだったわけです。ところがよく検討してみるとなかなか大変なので、議論が進む中でどんどん盛り下がってきて、結果的には6月頭に自民党の作業チームが、すぐに導入するのはやめたほうがいいと提言を出して、基本的には消えたわけです。一応、過去の経緯も書いておきましたが、明治時代は9月入学だったんです。それが、国の会計年度が4月になったので、師範学校や当時の小学校などが4月入学になった。大学だけがずれていたんですが、何十年か運用する中で4月入学に移行したみたいです。9月入学は中曽根内閣の頃から議論になっていますが、未だに実現はしていないんですね。経団連も政府もこれからやると言っていますが、やりようがないんじゃないかなと思います。

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 9月入学導入派の論点としては、休校措置で失われた学習機会を回復したいということ、留学などに有利になることが出ていますが、私が主張していたのは、「年間スケジュールが組みやすくなる」ということです。これはなぜかと言うと、いま春休みは2週間ありますが、これは年度替わりが春であるがために必要になっているんです。多くの国ではだいたい夏に学校の年度替わりをやっていて、8月が暑いから9月入学が多いんですよね。だから南半球ではスケジュールが違うし、例えばタイは一番暑い時期が明けた6〜7月に始まるんですけど、 どうせ休まなきゃいけないので一番暑い時期に年度替わりを入れて、その後は年度の途中に長期の休業が入らないようにスケジュールを組んでいるんです。日本だけが年度が始まって3ヶ月ぐらいしたらいきなり6週間夏休みが入るというスケジュールになっているんです。ここでまた生活がガタガタになってしまって、9月1日がきつくなってしまうのは、そういう背景があるわけですね。春休みは年度替わりだからどうしても必要になっているわけですが、春休みってものすごく短くて、準備がすごく大変なんです。現場の先生は4月1日に人事異動して、何年生を担任するかが決まり、4月6日ぐらいから授業をしきゃいけないわけで、やっぱり新人の教員とかは本当にきついですよね。だから、春休みで年度変わりにするのは実はかなり非合理なので、諸外国と同様に夏休み明けの9月から年度を始めるという設計にした方がやりやすい。そういう論点はあるのかなと思います。ただ問題は、入学時期を遅らせるということは、義務教育の開始が遅くなることでもありますし、とにかく移行が大変です。移行の途中はどこかの学年がものすごく多くなるとか、小学校の入学を待つ子供が多くなるといったことが起きるので非常に無理があるんですね。多くの法改正や制度改正が必要なこともあります。だから、こんなの無理だろうと立ち消えになったのは、当然かなとも思っています。

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 コロナ後、これからの学校について感じていることを書いたんですけれども、いま学校は大学以外は基本的に通学していますよね。三密を避けるということはやっていますが、どちらかというと熱中症対策の方が深刻で、マスクより換気より冷房が重視されていて、それでも学校内でのクラスターはあまり発生してないですよね。今まで部活ではいくつか出てますけれども、教室の授業で感染が拡大したという例が少ないんですね。だから、恐れながらやっていますけども、この時期になってきて、学校では「もうこのままやれば大丈夫なんじゃないか」という雰囲気になっているのを感じています。

 しかしその一方で、感染対策は必要で、教員が消毒業務までやっていて忙しくて、オンライン教育などの新しいことをやるのではなく、この学校に子供が来ている状況で少しでも教育を進めようと頑張っているところですね。さっき言ったように、GIGAスクール構想で1人1台端末の配備は進むんですけど、どう使っていくかが決まってないので不透明で、どう活かすかが大きな課題です。おそらく、春のように大規模な休校が発生しないとオンライン教育は進まないんじゃないかと思います。

 9月入学に関しては、休校措置も一段落して望む人自体がほとんどいないので、これからやってもあまり意味がないでしょうし、1年ぐらいコロナ禍が続く可能性もあるので、入学までの期間を多少延ばしてもあまり意味がないという空気感になっています。一応文科省も政府も導入を諦めてはいないことになっていますが、現実にはないと思います。

 一方で話として盛り上がりつつあるのが少人数学級化です。分散登校をやってみて、「なんで教室に30人も40人もいたんだろう、15人とか20人だとすごく過ごしやすいよね」ってみんなが気付いてしまった。その上に感染防止の効果もあるので、そういった話が出ています。本来は学級の規模の問題よりは、子供1人あたりの教員の数をもうちょっと増やして、少人数教育を柔軟にできるようにすることだと思うんですけど、どうしても学級という枠でいろいろな制度ができているので、少人数学級という話になっています。安倍政権が変わるのでどうなるかわかりませんが、先日の教育再生実行会議でも肯定的な意見ばかりだったそうで、30人くらいに減らすことはすぐに実現すると思います。コストはある程度かかるんですけど、30人ぐらいであればそんなに無理はないという議論もありますね。

 今、コロナ中の話を中心にしていますが、コロナ以前から教員のブラック化が問題になっていて、負担軽減をしなければいけなかったわけです。さっきデータもお見せしましたが、ICT活用が全然進んでなくて、せめて諸外国並みにしなければいけないと、EdTechとして動いてはいた。それから、学校でやっていることが社会とうまく繋がっていないんじゃないかという議論もずっとあって、学習指導要領が変わったことで変わるだろうという話にもなっていた。発達障害などの多様な学習者や、外国から来た日本語ができない子供が増えていて、こういう子供たちへの対応も課題だったんです。ようやく今までの課題の解決の方向性が見えやすくなってきた気がしているのですが、まだまだこれからですね。とにかく今は現場でバタバタしています。

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 最後の資料ですが、改めてこの半年間現場にいた中で考えたことを整理してみました。やっぱり、ひとつは学校と子供・保護者の共依存関係です。学校が子供や保護者にかなり頼られていて、学校は子供がいないもちろん成り立たないので、子供を学校に囲いたがる。感覚的には9割以上の子供や保護者が、とにかく毎日学校に通えるようになってほしいと考えていて、自分たちでなんとかするという方向には非常になりにくかったと思います。休校期間を経て、家に閉じこもるか、学校に来るかしか選択肢がないので、子供たちが休み前よりもすごく楽しそうに学校に来るようにはなりました。つまり、理念としては子供が学ぶ力をつけて、自由な状況で自分で学べるようになって欲しいのですが、全然そうはなっていなかったと認めざるを得ないということだと思います。学校は子供を預かる場として非常に期待されていますが、預かるだけではなくてケアをする場所であることが大事で、子供たちが抱えている様々な課題を学校が見つけてケアしなければいけない。例えば、家庭で虐待を受けている子供がすごく問題になってきてますが、学校が見つけることを期待されている部分も非常に大きいんです。だから、子供たちの様子がおかしいと、教員がそれに気付き問題を確認して、福祉機関とつないでいかなきゃいけない。子供が学校以外にそうやって所属できるコミュニティがほぼなくて、確かに塾や習い事はありますが、ケアはしてくれないので、結局学校は福祉的な機能が重要になってきてしまっている。これはもうそういう方向で行くしかないのかなという気さえします。


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