マル激!メールマガジン 2015年12月23日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第767回(2015年12月19日)
われわれはテロとの戦い方を間違えていないか
ゲスト:臼杵陽氏(日本女子大学教授)
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パリの同時多発テロに米カリフォルニア州の福祉施設における銃乱射事件と、イスラム国もしくはそのシンパによると見られるテロが相次いだことで、イスラム国が掲げる「グローバルジハード」や、先進国の住民がある日突然テロリストと化す「ホームグロウン・テロリスト」の脅威が、にわかに現実味を増してきている。世界は先進国に住むわれわれも、常にテロの恐怖に怯えなければならない時代に入ったのだろうか。
中東情勢やイスラム教に詳しい日本女子大学教授の臼杵陽氏は、現在のアメリカを中心とするいわゆる「対テロ戦争」の方法は、まったく間違っていると指摘する。イスラム過激派勢力によるテロがここまで大きな脅威となった背景には、1979年以降にアメリカが採用してきたイスラム圏に対する外交政策の破たんがある。その政策的な失敗のつけをイスラム諸国側に負わせ続けた結果、これまでイスラム諸国側では戦乱に次ぐ戦乱の中で未曾有の犠牲者を出し、しかも現在イスラム圏は底なしの混乱状態に陥っている。
こうした怨念の中から生じているテロという行為を、単に軍事力によって抑え込むことができないのは自明だ。なぜならば、テロは軍事的に戦っても敵わない相手に対する弱者側の唯一の報復手段だからだ。しかし、アメリカも他の欧米諸国も、今のところイスラム国やそこから派生するテロを、また力で押さえ込もうとしている。アメリカの軍事力を以てすれば、イスラム国を抑え込むことは可能かもしれないが、それではまた新たな怨念を生み出すだけで、テロの無限連鎖が続くことは避けられない。
日本を含め、欧米諸国はいずれも民主政の下にある。国の政策は有権者たるわれわれ国民一人ひとりの意思の反映に他ならない。われわれ一人ひとりがイスラムに対する正しい理解と、欧米諸国が中東で行ってきた数々の失政の実態、そしてそれが地域にもたらしてきた混乱と犠牲と悲しみの歴史を多少なりとも理解しない限り、テロの温床となっている過去への怨念を取り除くことは難しいだろう。
特に日本はこれまで中東地域を侵略したり、植民したりした歴史がない、先進国の中では数少ない「手を汚していない」国だ。日本にしか果たせない役割があると臼杵氏は言う。今世紀をテロの世紀としないための方策を、ゲストの臼杵陽氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・テロの温床を生み出したアメリカの失政
・“グローカルジハード”の脅威
・イスラムへの理解が進まない理由
・本当に必要とされるテロ対策とは
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